前に脱原発についての記事を掲載した際に、東電の財務状況を踏まえるとしばらく電気料金の上昇は避けられない、という話をしたのですがその続きです。
細かいことはメルマガに書いたのでざくっとご紹介です。決して原発を再稼働すべし、と決めつける趣旨ではなく淡々と状況をまとめただけですのでその点勘違いなきようヨロシクお願いします。
さて今後の電力料金の行く末を占うにあたっては、東電の賠償負担の他にも再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の影響を考える必要があります。ヨーロッパの先進国はFITを取り入れている国が多いのですが、それらの国と原発の運用状況と自前の資源の有無を踏まえて、家庭用電力料金を2012年末時点でまとめてみるとだいたい以下の表のようになります。
こうして見るとFITを始めたばかりにも関わらず日本の電気料金の高さに驚きますが、これはいわゆる民主党政権末期の超円高のせいでそのかさ上げ効果の影響です。この頃に比べれば円は4/5程度に価値を落としているので、2013年第三四半期では電気料金の値上げがあったにも関わらず日本は25セント/kwh程度となっています。
さてこうして見るとヨーロッパ組は(FIT○、原発○)の「ドイツーイタリア型」と(FIT○、原発×)の「イギリスーフランス型」に別れていることがわかります。さらに言えば「ドイツーイタリア型」では産業向け電力を大幅に安く設定しているドイツ(15セント程度)では家庭向けの電力が35セントを越えており、家庭ー産業が均等に負担しているイタリアは30セントに納まっています。この場合イタリアの方がむしろ特殊なケースで、イギリスもフランスも日本も産業向けの電力を安価に設定しています。
そんなわけで「脱原発」ストーリーを歩みなおかつ為替が安定的に推移するとした場合、今後日本がドイツの水準近くまで家庭用電力があがってもおかしくないと考えられ、現状の1.4~1.5倍程度まで電力料金は上がることを覚悟しておいた方が良いでしょう。だいたい35円/Ikwh程度でしょうかね。原発を稼働しない限りは仕入れ値ベースで45円近い太陽光発電の電力比率が増えていくので電力料金があがるのは避けられず、LNGも足下を見られて高値で買わされる状況は続き、なおかつ東電管内では被災者への賠償という特殊事情があるので40円/1kwhの水準になってもおかしくありません。
(出典:「電気料金制度の経緯と現状について」(資源エネルギー庁,平成23年11月))
他方で過去の日本の電力料金の推移を見ると、昭和61年の28.9円/1kwhが最高水準ですので、このラインを超えるかが一つの大きなマイルストーンのように思えます。(とはいえこの頃は1ドル=180円程度だったんですがね)
東電管内で言うといびつなことに最大のキーマンは舛添東京都知事ではなく柏崎原発がある泉田新潟県知事なので、彼の原発に対するスタンス、残り任期(2016年10月まで)、既に3選しており次は出馬しないと見られること、を考えるに、「2016年までは柏崎原発は塩漬けになり、その後新新潟県知事の誕生とともに再稼働」というのが一番あり得そうなストーリーなので、それまでは電力料金は徐々にあがっていくように思われます。実際フィルター付ベントに関する技術的問題もありますし。
なんとなく一つの区切りとして30円/1kwhあたりが攻防戦になるような気がするのですが、そう考えると今後家庭やスーパーなどの低圧電力市場の節電/デマンドコントロールの市場は盛り上がってくるように思えます。生活スタイルを見直すいいキッカケなのかも知れませんね。しかし自前の資源があるアメリカはうらやましい。彼らなら平然と脱原発をやってのけるでしょう。日本も10年後くらいにはメタンハイドレートがモノになっていると大分状況が変わるのですがね。
ではでは今回はこの辺で。
編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2014年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。