経済や投資に興味がある方なら2月17日に発表になった10~12月のGDPが年率換算でわずか1.0%に留まったことに戸惑いの表情を見せたかもしれません。消費税前の駆け込み需要は何処に行った、ということです。しかも日経新聞によると消費のセグメントは僅か0.5%しか伸びておらず、前回、3%から5%に消費税を引き上げた際の駆け込み需要に伴う消費セグメントの上昇が1.1%だったという報道をみれば確かに拍子抜けするほど低い数字だったということになります。
では消費は何処に行ったのでしょうか? 2013年を一年間もう一度俯瞰すると「アベノミクス祭り」が最高潮に達したのが2013年5月です。その後、株価はすとんと下げ、年後半に一旦切り返したものの今年に入ってずぶずぶになっています。特に直近では外国人が売り、個人が買う構図に個人の損失が大きくなり、信用の追証が相当発生した可能性があります。これでは昨年の株高で恩恵を受けられたのは5月までの株高だけです。そして、株をやる人はずっとやり続けることが普通です。となれば、株が高くなったから消費に向かう資金は一部でほとんどを再び株に回す人が大半なのです。これでは株高による消費の恩恵は作り上げられなかった、ということになります。更にNISAで消費を低迷させる間接的原因を作ったかもしれません。
では、住宅はどうでしょうか? 戸建住宅は昨年9月までの請負契約が節目でしたが、それ以降、住宅メーカーの受注は前年比二ケタ減が続いています。思ったより反動減は少なかったのですが、その後の盛り上がりも今一つという気がします。マンションは売れているようですが、人口減が続き住宅が有り余っている日本でいつまでもマンションが売れるというシナリオも期待しすぎてはいけないでしょう。
GDPの計算はざっくり民間支出+民間投資+政府支出+輸出-輸入です。この中で輸出と政府消費はそれぞれ0.4%、0.5%増と個人消費の0.5%増を含め、低迷していることがはっきり見て取れます。それに対して住宅は4.2%、公共投資が2.3%増と増えているのが特徴ですが、それをぐっと打ち消すのが輸入増の3.5%という数字になっています。
単純に見れば明らかに円安を含めた輸入品の増大によりGDPそのものが低迷する理由となっていますがもはや、これは構造的低迷と考えてもよいと思います。それは国内産業の空洞化により多くの商品は海外からの輸入品に頼っているということであります。皆さんの洋服で日本製はどれ位あるでしょうか? 高級品を除き、ほとんどないはずです。家電製品で日本製はどんどん少なくなってきています。では雑貨はどうでしょうか? 100円ショップの商品は中国から大半がやってきます。
つまり、変な話ですが、消費が増える=輸入が増えるという構図になりGDPは相殺されると言えるのです。
公共投資によるGDP効果は私は頭打ちだとみています。理由は至極簡単で、生産能力=労働力がないのだからアウトプットできない、ということであります。政府がいくら公共投資向けの予算を増やしても入札不調ばかりが増える現実は何かといえば限られた労働力を使うなら利益率の良い民間工事にシフトするということであります。
ところで労働力ですが、大卒の就職率は昨今、かなり素晴らしい数字が出てきています。一方で非正規労働者が全体の三分の一になるというのも奇妙な話です。なぜでしょうか? 今後、追求してみたいと思いますが、可能性としては大卒で苦労して就職しても1、2年でリタイアするグループが非正規組になっているような気がします。
労働力不足が心配される日本で起きていることはミスマッチそのものです。数だけとらえれば誰でも就職できるのに雇用側と就活する学生に期待の差ができていることが最大の「非効率性」を生み出している気がします。つまり、政府として金をかけないで効果が期待できる分野にこのミスマッチ解消策があるのかもしれません。
昨日、日銀は貸出支援基金の拡充なるものを発表し、株式市場は踊りましたが、異次元の金融緩和を含め、日銀券が応分で増えていないことを考えれば実体経済にはほとんど効果はないはずです。どうしたら日本が本質的に立ち直ることができるのか、その答えは頭で考えるほど簡単ではないのかもしれません。ただ、キーワードとしては知的産業、農業、資源、海外投資マネーの取り込み、人口増、(スイス時計のような)高付加価値産業の育成を私は頭に描いています。そこには決してギミッキー(手品のような)手法はなく、正攻法で捉える分野であるものだと感じています。
「日本は大丈夫か」を二回にわたりお読みいただきありがとうございました。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年2月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。