池田さんの書かれた「イノベーションは予知出来ない。」という命題には、全く同意します。 だからこそ、私は政策の技術中立性の重要性をより強く主張します。
とはいえ、技術中立性を重視しすぎると、具体性、実現性に欠けた政策となり、時間だけが浪費されます。
では、少なくもとある技術を評価する時には、なにに照らし合わせて判断すればよいのでしょうか?
私は、過去の多くのイノベーションと言われた革命で、The Internetのようなパラダイムシフトはあっても、万有引力の法則のようなPrincipleを覆す、または凌駕した事実はなかったと認識しています。
1.光と無線の比較
そこで、議論になっている無線と光の話ですが、ここでは松本さんも書かれているシャノン限界が明確に存在しています。
これは、C=W・log(1+S/N)というもので、通信の速度は、帯域とS/N(信号・雑音比)の積に比例することを示しています。
少し、簡単に表現すると、高速の通信をするには、帯域が広いか、信号を大きくする、または雑音を小さくする必要があるということです。
無線と光を比較した場合、光の帯域は、限りなく大きく、無線は周波数で決まりますし、閉じた通信の光に対して、外乱要因のある無線のほうが、高速通信をするのに必要なエネルギーは大きく、許容できる雑音は小さいのです。
もちろん、イノベーションにより、シャンノン限界に近づいていますが、これは無線にも光にも適用されますから、いつまで経っても無線が光を凌駕し得ないし、交換可能なものでもないと思います。
そして、もうひとつの事実は、光ファイバーは、移動するものに使えません。
2.Pon と Single Star
次に、FTTHの手法ですが、いま日本で主流となっているPONという方式は、一つの光ファイバーを複数の利用者に時間で分割して共用するものです。 これに対して、一部で採用されたシングルスターという、各家庭に一芯ずつの光ファイバを引く手法がありますが、こちらの方が当然ながら、将来における適応性は高くなります。(それゆえ、PONのことを、Pure Man’s Optic Networkなんて言う人もいますし、SBでもSingle Starを当初は目指していたはずです。)
また、PONの場合は、この時間分割共用する装置と光ファィバがセットで導入されますから、光ファィバと共用技術が密に結合してしまいます。(これが、8分岐問題の根幹です。) しかし、シングルスターの場合には、光ファイバは単なる土管で、両端に接続される機器の技術とは分離できます。
ということで、Principle に照らし合わせれば、
1.利用可能帯域は、光は無線よりも常に高速である。
2.光は移動体には、利用できない。
3.PONよりもSingle Starのほうが、高速であり、適応性が高い。
となります。
この事から、もしこれからの将来を論じるのであれば、
1. 無線は移動体に利用し、家庭や事務所のアクセス回線は、光を使う。
もろちん、家出も移動体だけで良いという人を否定はしませんが、両方は併存するものです。
2.長期ビジョンでFTTHを推進するというのならば、新設部分はシングルスターを導入する。
という事が,私としては推奨したいものです。