朝起きたら、消費税論争が始まっていた・・・
ただ、ちょっと誤解があるようなので、1点だけコメントしておきます。消費税が「逆進的」だという小飼氏の議論は誤解です。こういう議論は「限界消費性向」というケインズの概念にとらわれているが、人々は当期だけで場当たり的に消費するわけではないので、生涯所得で考えたほうがよい。
生涯所得で考えると、人々の所得は勤労所得と引退後の年金にわけられます。一般に後者のほうが低いので、現役のとき高い所得を得ていた人でも、引退後は所得が低くなり、消費性向は上がる。人々が合理的に消費すると仮定すると、死ぬまでに所得をすべて使い切るので、生涯所得に対する消費税の比率は同じです。
実証的にも、この推定は確かめられています。大竹文雄氏と小原美紀氏によれば、次の図のように(所得が最高の)10分位の消費税の生涯所得に対する負担率は4.05%であるのに対して、第1分位の負担率は1.59%。消費税は、かなり強く累進的なのです。
ただし外食費を除いた食費の税負担率は、わずかに逆進的です。これが欧州などで食費について消費税を軽減する措置がとられている理由ですが、このような区分は恣意的で混乱をまねきやすい。たとえばハンバーガーは店で食うと外食(贅沢品)として課税されるが、テイクアウトすると非課税になるので、ハンバーガーを店の外で食う人が増えるでしょう。
この程度の逆進性はそれほど問題ではないので、給付つき税額控除など税制全体で是正するのが妥当だと思います。ただし現在の消費税には、非課税業者に「益税」が発生するなど深刻なゆがみがあるので、税率を上げるだけではなくインボイスの導入によって正確に課税する改革が必要です。
コメント
以前亀井大臣が「郵貯銀行と簡保生命との内部取引に消費税をかけない」と言った。消費税の納税システム上、まったく意味のない議論であることが分からなかったのだろう。菅財務大臣(当時)がまともに反応したことからみて、税の大元締めの財務大臣でさえ、消費税の構造が分かっていなかったと思われる。比較的単純な消費税でさえ分かっていない人が多いのだ。
「生涯所得に対する消費税の比率」
ほとんどの人は「生涯所得」なんてレベルで考える程物事を超長期的な視野で捉えていないので、「生涯所得に対する消費税の比率」なんて言われてもピンと来ないでしょうね。私も上記の図を見て「なるほど」とは思っても、なかなか実感は湧きません。
消費税に関しては、最後に触れられていた徴税方法の問題が最大の問題だと思います。個人に番号を振るより先に、事業所に番号を振って欲しいものです。
「死ぬまでに使い切るという仮定は非現実的だ」とかいうコメントがたくさん来たので、すべて削除しました。その仮定が実証的にフィットしているのだから、死ぬときの遺産の残高は生涯にわたる消費の総額に比べると無視できるということ。
上の「生涯税負担率」は税制に変更がないと仮定しているものと推察します。
しかしながら、生涯のうちに一度も税制改正を経験しない人はいないでしょう。
個人的な感覚としては、遅かれ早かれ消費税率は引き上げられる気がします。
そうすると、国全体としての良し悪しは別として、私(40代サラリーマン)の様な世代の人は、引退するころに消費税率がピークを迎えると言うのが最悪のパターン(給与所得が消費を上回る間は所得税で搾り取られ、給与所得がなくなってからは消費税で搾り取られる)になります。
消費税を巡る議論はもっと世代間の意見の対立と言った図式になりそうな気がするのですが、そうでもないのが不思議です。
と言うことで、全く個人的な意見としては、消費税率をいつかは上げると言うことになるなら出来るだけ早く上げてほしいと考えています。
もっとも、弾さんは所得税、法人税、消費税以外の全く別の財源に関する解決策をお持ちの様ですのでその様な方法があるならそれはまた別の話しですが。
ははあ。少し乱暴ですが、「子供は福祉を受けるばかりだが、それを不公平と言う人はいない。それと同じで、老人になってから消費税を多く納めることになっても、一生涯で言えば公平になっている」ということでしょうか。この視点はなかったです。
ただこの見方は「消費税 VS 所得税」で考えた場合です。消費増税と所得減税をセットで考えた上でのみ成り立つ話のように思えますし、また「消費税+所得税 VS その他の税」という視点ではどうなのか、という辺りにも触れていただければ。
データを見て結果として累進性があるように思えますが,
なぜそのような結果がでているのかが少しピンときません.
生涯所得の低い人ほど,生涯所得に対する消費税の掛からない家賃や学校の授業料などの消費の割合が大きいからそうなっているのでしょうか?
逆進性を問題とするなら究極の逆進税である人頭税の廃止を主張すべきでしょう。年金・保険という名の人頭税がなくなれば低所得者の可処分所得は大きく増えます。
死ぬまでに使い切れない分は相続税をかければよい。
こちらに関しては全く素人なので内容もあまりよくわかりませんが、消費税なんか大した問題なのでしょうか。
固定額で一律払わせる国民年金とかの方がはるかに逆進性がつよいでしょう?年収200万くらいのフリーターだと年金額で収入の10パーセントくらいになります。まともに払っていればですが、というか普通に考えればおそらく払えない。逆進性ということでいうとこちらの方が遥かに問題だと思います。固定比ではなくて固定額ですから、事実上これ以上逆進性の強い負担はない。(NHK料金とかもそうですよね。人によってはこれだけで年収比2パーセントくらいになります。)
消費税の増税でこのあたりを是正できればトータルの逆進性は大幅に下がるのではないんでしょうか。民主党も基礎年金部分は税方式で、ということでしたよね。
消費税のお話でいつも疑問に思うのはこういう現実の収入支出総額に対しての負担の累進比率の話がでないことなのですが、あるいはただの僕の無知無理解に過ぎないのか、この辺のお話について池田先生の方から解説いただいたりできないでしょうか。
所得=消費の少ない人は、消費に占める非課税支出(医療・家賃等)の割合が高いということではないでしょう。また、所得階級が(累進課税の)税引後所得に対するものだということも、実感と違う要因と思います。生涯の可処分所得に対する消費性向は大きく変わらないという前提(死ぬまでに使い切る)なのですから、当たり前の結論とも言えます。問題は、累進の程度が適当かどうかではないでしょうか?
食費については、所得の少ない人ほど外食依存度が低いということでしょう。食品を非課税にするのは検討の価値がありそうですが、チップ習慣のない日本では飲食業に対する不公平が大きくなりそうな気もします。
11番のコメント、最初の文の終わりを「ということではないでしょうか?」に訂正いたします。
「死ぬまでに使い切る」に違和感を持つ人が多いのは、漠然と「相続税の対象は莫大な現金遺産が主である」みたいなイメージがあるんじゃないでしょうか。
税収に占める相続税の割合が非常に小さいことと、その税収も不動産関連の資産相続が主であろう事を想像すれば理解しやすいんじゃないかなと思います。
結局、納税に関する不公平感を解消するのが先じゃないでしょうか。その意味でも消費税のupと所得税downが望ましいと思います。
単年度で考えるとたしかに逆進性があるでしょうけど、よくよく考えてみれば、貯金って、将来何かを買うためにするのであるわけで、そうであれば確かに「使い切り」の形になりますね。なるほど。
私も今朝方の書き込みを消されたのですが、消されたことはともかくどうにも腑に落ちないので再度コメントします。
まず大竹・小原メモが消費税の累進制の根拠になっているが、これがどうも限りなく怪しい。
ライフサイクル仮説によれば生涯の消費税負担率は同じになるという概念はよく分かりますが、何故累進的であるという結論に達するのか疑問です。
その根拠を探したのですが、このメモの9ページ10行目あたりに「消費階級別データは公表されていないため、特別集計をおこなって必要なデータを作成した」と記してある。
では「特別集計」ってどうやったのか何処にも書いてないのですが、何故でしょ?
もう一つライフサイクル仮説では「生涯所得=生涯消費」なはずであるから、消費階級別に並べても水平な直線にしかならないはずだ。
このメモには日付も書いてないし唯一1999年のデータだということで、住民税が一律になった現在では説得力に欠けると思っていたら…
やられました!! ブラウザでページ情報を見たら「2010年4月1日 10:12:58」でした。もう悪い冗談はやめてよネ!
専門外の者ですが,悪質な数字遊びのように思います。
問題のグラフの横軸は生涯所得とあります。しかし,
方法の説明によればこれは生涯消費で,「経済学の標準的枠組み」に基づいた生涯所得の近似にすぎません。
一方の縦軸は,生涯消費に基づいて計算されるところの消費税負担率。縦軸の分子と横軸の両方に生涯消費が
含まれるのですから,正の関連が見られるのは当然です。
生涯所得を,消費からでなく直接所得から計算した結果
について,同論文は以下のように記述しています。
—-
課税前所得階級で生涯所得を作成した場合は、消費税に逆進性が観察できる。課税前所得階級で最低所得階級である第?分位では、消費税の負担率は5.29%、最高所得階級である第?分位では1.79%である。つまり、伝統的な所得階層別データで見れば、生涯所得を計算しても、消費税の負担率は逆進的に見える。
・・・生涯所得の高い人ほど、生涯所得に対する消費性向が高いため、消費税は累進的でさえあった(論文7ページ目)
・・・これって、ようは(所得税等課税後)生涯所得が高い人ほど、金融資産の割合が生涯所得に対して割合として少ないということでしょうか?だとしたらなんとなく納得できるような気もしますけどもね。
あと重要な指摘として、少子高齢化社会における財源としての消費税が必要という指摘もあります。私はこの点には非常に納得してしまうのですが。現役世代の所得税だけで今後もやっていけるのでしょうか?とても不安です。
「当然」が舌足らずだったので補足します。消費性向に,生涯所得に依存しない若干の個人差を考えるということです。
単純化のため,消費の機会は人生に3回,所得を
稼ぐ機会は2回しかなく,残りの一回は定年後で収入ゼロ
とします。また,コホートの区別はなく1世代しかいない
とします。仮定により,消費額は各回で不変,真の
生涯消費と真の生涯所得は等しい。実際に研究者が
把握しているのは時点1の消費・所得のみで,そこから
生涯消費・生涯所得を推定します。
以下のデータで,推定された消費性向と生涯消費,生涯所得の相関係数をそれぞれ求めれば,前者が
正の,後者が負の相関を持つようにバイアスを持つことが
わかります。
ID 消費1 消費2 消費3 推定生涯消費 所得1 所得2 所得3 推定生涯所得 消費性向
1 60 60 80 180 90 110 0 180 1.00
2 40 40 120 120 110 90 0 220 .55
3 60 60 80 180 110 90 0 220 .82
4 40 40 120 120 90 110 0 180 .67
5 120 120 160 360 180 220 0 360 1.00
6 80 80 240 240 220 180 0 440 .55
7 120 120 160 360 220 180 0 440 .82
8 80 80 240 240 180 220 0 360 .67
9 180 180 240 540 270 330 0 540 1.00
10 120 120 360 360 330 270 0 660 .55
11 180 180 240 540 330 270 0 660 .82
12 120 120 360 360 270 330 0 540 .67
シミュレーションの頑健性は試していませんが,意図は
こういうことです。
18.student_yさんへ
全然計算が合ってないのですが…
また、この種のご自分の理論を掲載するのなら、ご自分のブログやWebSiteで書いて頂き、そのURLをここに貼り付けるなり、トラックバックすればよいでしょう。
19. https…さま
ご親切にありがとうございます。ブログ等持っていないのと
理論などとは呼べない簡単な計算なのでそのまま
書かせて頂きました。またtwitterのURLを貼りました。
ちなみに,どのへんが計算合っていないでしょうか?
推定生涯消費や推定生涯所得が単純な合計になって
いない,という意味でしたら,元論文を参照して頂ければ
ご了解頂けると思います。
student_y様
仰る通り単純な合計になっていないという指摘です。元論文って何ですか?大竹・小原メモの事ならエイプリルフールと思っていますので、精読する気がおきません。
仮に正しいとしても、未来の価値を現在価値に換算している記述が見当たりませんので、個人的にはそもそも信頼していません。
なおブログ等を持っていないというのは理由になりません。誰でも無料でかつ容易に持てるのですから。
twitterはブログの一種ですが性質はチャットに近く、普通のブログの方が長文に向いていると思います。
ポスドクなら、理音さんや毒男さんを見習うべきですね。
21. https…さま
お返事ありがとうございました。まとまった意見を
表明するならブログで発信すべき,というのはその通り
ですね。検討させて頂きます。
大竹・小原メモは,小原氏のCV
http://www2.osipp.osaka-u.ac.jp/~kohara/CV%20japanese.html
によれば2005年論座所収の論文のようです。
仮想データの計算ですが,上記論文では
ある一時点で測定された消費・所得ランクが世代を
経ても変わらないもの,として各世代の消費・所得を
足し合わせて生涯消費・所得を計算しています。
要するに一時点の消費・所得からから生涯の消費・所得を
推定しているので,より単純化した仮想データでは
一時点目の消費を3倍,所得を2倍(定年後は収入ゼロと
仮定)して「推定された」生涯消費・所得を計算しています。
真の生涯消費・所得は,観測されていない2時点目以降の
消費・所得まで含めて足し合わせたもので,各個人毎に
生涯消費=生涯所得になっています。
私の意図としては,消費税が比例的である以上に
累進的になるような理論的根拠は想定しづらく,
「消費税は逆進的ではない」とは言えても,「累進的」
というのは統計的アーティファクトなのではないか,という
ことを示したかったのですが,仮想データは不完全かも
しれません。
また,仰る通り現在価値が将来価値より高いことを
考えれば,結局「消費税は逆進的である」と言えることに
なりますね。
ご教示ありがとうございました。