Flashを巡るAppleとGoogle の思惑 ー小川浩( @ogawakazuhiro )

実はいま、ITジャーナリストの林信行さんとの共著で「アップルvs.グーグル」という本を書いています。正確に言うとほぼ書き終えたところで、2010年7月の発売を目指して最終チェックをしているところです。
僕たちはAppleとGoogleのコラボレーションが世界を変えつつあると主張してきましたが、その予言はいよいよ現実になりつつあります。
僕は敢えて、コラボ、と書きました。マスメディアはAppleの閉鎖的なビジネスモデルに対する批判的な見方や、AppleとGoogleの一触即発の冷戦状態を取り沙汰することが多いのですが、僕たちのスタンスは、それでも両者のワルツは続いている、というものです。


それが明確になる理由や論拠については、来月発売になる本書をお読みいただきたいのですが、一つだけここで指摘をしておきましょう。

Appleの革新性は、彼ら自身が不要と感じた”古い”テクノロジーをあっさり切り捨てることで生み出されたものです。つまり、不要なテクノロジーを間引くのです。過去にはフロッピーディスク、いまや物理的なキーボードやマウス、GUIなどが間引かれようとしています。

そして、アドビのFlashも、Appleに見捨てられました。
iPhoneとiPadでの利用ができない以上、今後のコンピューティングの舞台からは追放されたようなものです。

しかし。

ここでアドビとFlashに救いの手を伸ばしたのが他ならぬGoogleです。
Googleは、Android OSのプラットフォーム上でのFlashのサポートを表明しました。同時に、「みんなが使っている技術を締め出すことはしない」と言って、暗にAppleの姿勢を批判したのです。

このことについても、AppleとGoogleの対立、という見方する人が多いわけですが、僕はそうは思っていません。いまやAppleのiOSとGoogleのAndroidは二大モバイルインターネットプラットフォームです。ここでGoogleまでもFlashを切り捨ててしまえば、アドビは死に物狂いになり、下手をするとAppleに対して法的手段をとるでしょう。また、AppleとGoogleの歩調があまりにあい過ぎれば両者の結託に対する、独占禁止法の適用がなされるかもしれない。
どちらにしても、AppleとGoogleはいまや互いを好敵手として必要とせざるをえない、複雑な関係になっているといえるのです。お互いに、相手がいるから存在が許される、そんな関係です。

もちろん、部分的には両者はさまざまな市場における覇権争いを真剣にしていますが、全体的には、互いを滅してしまうようなことは決してできない。一昔前の米ソの関係に似て、戦ってはいるけれど米国の軍産共同体にとっても、ソ連の共産党トップにしても、適度な緊張関係を保つことによって、自分たちの利益を守ってきたように、AppleとGoogleにも同じような関係性が存在している。僕たちはそう捉えています。

コメント

  1. base_ball_fan より:

    例えばマイクロソフトのWindowsOSが独禁法に触れないのはAppleのMacがあったから。もしMacが無かったらマイクロソフトは分割されていただろうと言われています。市場に競合他社は必ずいないと困るわけですが、これはとりたてて述べるほど特別な状況でなく、どんな業界にも必ずある当たり前の状況と思います。

    競合企業同士は必ず競争していなければなりません。「調性的な行為」があった場合に不正競争ということになります。「俺たちが訴訟されないように、そちらでFlashは使ってくれ」という調整は決してあってはいけないし、実際あり得ないと思いますが。

    逆にFlashが本当に市場価値が無いと判断されるのであれば、AppleにもGoogleにもサポートされないことは市場原理による自然淘汰であって「結託」ということにはならないはずです。