著者:レイチェル・ボッツマン
日本放送出版協会(2010-12-16)
★★★☆☆
本書の原題は”What’s Mine Is Yours”だが、邦題はベストセラーになったFREEの二匹目のどじょうをねらったものだろう。内容もよく似ており、MacroWikinomicsとも共通点がある。要するに、ネット上のコラボレーションで資源を共有することで新しいビジネスが生まれるという話だ。
中身は、この種のビジネス書によくあるカタログで、実にさまざまな「共有」型のベンチャーが出てくる。よく知られているのはFacebookなどのSNSだが、それ以外にも自転車をシェアするビジネスや古いおもちゃを再利用するビジネスなど、資源を共有することで効率よく利用するサービスがたくさん列挙されている。その特徴は、コラボレーションがソーシャルメディアで行なわれていることだ。インターネットがなければ、この種のサービスは不可能だろう。
オープンソースとかコモンズとかいう理想は美しいが、それが生まれてから25年以上たっても大したビジネスにならないのは、ネット上で閉じているためだろう。本書に出てくるビジネスの多くは、リアルな世界の買い物などに結びつけるもので、日本的にいえば「販促」である。ただ、どういうわけか「コラボ消費」の大ヒットとして話題になったグルーポンが、訳者あとがき以外に出てこない。
カタログとしてはおもしろいが、それ以上の理論や思想が書いてあるわけではない。本書をサポートするウェブサイトもあり、本書も読んだら他人にゆずってシェアすることが推奨されている。電子出版時代に、紙の本をシェアすることに大した意味があるとは思えないが、インターネットを実世界のビジネスに結びつけるアイディアがたくさん出ているので、起業する人には参考になるかもしれない。