「日本財政」の異常事態はいつまで続くのか?

小黒 一正

日本財政はもはや危機的状態にある。平成23年度予算編成は、国債費を除く歳出を71兆円以下、財政赤字(国債発行)を44兆円以下に抑制する方針で進められた。だが、一般会計の歳入のうち、財政赤字(44兆円)が税収(41兆円)を上回るという異常事態が2年連続で続いている。


戦争混乱期の昭和21年度に財政赤字が税収を上回ったことはあるが、戦後において、当初予算で財政赤字が税収を上回ったのは平成22年度予算が初めてであった。私たちは今、約60年振りの異常事態に直面している。

問題は、「日本財政のこのような異常事態がいつまで続くのか?」ということである。

また、平成23年度一般会計の歳出は92兆円前後とする見通しだが、現時点では歳入不足が4兆円規模にも達し、もはや枯渇しつつある特別会計等の積立金を活用しない限り、財政赤字(新規国債発行)44兆円以下とする目標を遵守できない可能性も出てきている。

しかも、この財政赤字44兆円以下の目標は、税収が財政赤字を下回る異常事態を考慮すれば「甘々の目標」であるが、この目標が達成できても、それは新規財源債のみで、借換債などを含む国債発行額は平成23年度で170兆円超に及ぶ見込みである(図表)。

図表:国債発行総額の推移

このため、財務省は、国債の安定消化を図る観点から、2011年度の国債発行計画で、生保等の機関投資家に需要が見込まれる30年債や40年債といった超長期債を増発する方針を決定している。

だが、平成13年度以降、国債発行総額は100兆円を超え、いまや170兆円に迫る勢いであり、完全に「借金を返済するために借金をする」という自転車操業に陥っているのは明らかである。

いまは景気が低迷し国債利回りが1%前半で推移しているから、国債利払費は10兆円程度で安定している。だが、税収が国債発行額よりもずっと少ない日本では、景気回復の過程で、国債利回りが上昇すると、財政収支が悪化して、財政危機が顕在化するリスクが高まっている。

一般的に、景気後退期の財政再建は得策ではないが、もはやそのような原則が当てはまる状況でない。また、景気回復への期待も、労働人口が減少するなかで、従来のような成長を持続的に達成できるかは不透明である。

いまの政治は混迷を深めているが、一刻も早く、このような異常事態から脱出する必要がある。毎年1兆円のペースで増加する社会保障予算の膨張により、もはや歳出削減も限界に達しつつある今、消費税を含む税制と社会保障の抜本改革から逃避することは許されない。

拙書「2020年、日本が破綻する日」(日経プレミアシリーズ)では、そのために必要な再生プランの骨格を提案しているが、手遅れになる前に、政局重視(足の引っ張り合い)でなく、与野党含め、政策重視(前向きの戦い)での「連携+改革」が進むことが望まれる。

コメント

  1. galois225 より:

    消費税は少なくとも段階的に20%には上げないと財政が持たないことは明らかでしょう。 労働力人口の減少を補うには、移民を大量に受け入れなくてはいけないことも確かだと思います。 国債の国内消化ができるのも2-3年以内でしょう。 その後は金利がかなり上がる心配があると思います。 これだけ発行残高が大きければ逆ザヤの問題だけでなく、借り換えの際に金利が上がることで、兆単位の財政負担が生じます。 政府は国民に正直に状況を説明し、消費税増税(少なくとも10%に、できれば15%に)を実行してもらいたいものです。 これから先、さらに経済状況が悪くなる懸念もあるので、今のうちに増税しないと難しくなりますし、既に限界です。福祉も切り下げをするべきでしょう。  

  2. yossy0346 より:

    そもそも最近の日本企業は海外で稼いでいるのに国内の法人税やらなにやらだけで税収が上がると言うのがまず間違い。現在のままの徴税体制なら福祉の切り下げは当たり前でしょう。海外で働いている人たちは現地法人と国内法人で給料を半々でもらっていて、社会保険料は国内の給料分だけだったりします。これで税収も保険料収入も上がるはずありません。500兆円のGDPがあって海外での稼ぎもあればそれなりのパイがあるはずです。また、今年金をもらっている人たちは保険料に対して非課税だったはずなのに、5.5%とかいう法外な利回りで給付を増やした上に、さらに年金としてもらうときに120万もの非課税枠が設けられているという、この二重非課税問題。
    軽く消費税20%とか言う人はまず赤字の原因を考えてからにしましょう。

  3. guhshi より:

    消費税を導入する前に
    国民の理解を得る内容として
    痛みを分かち合うとしてまずは議員定数の削減、議員歳費の削減を先人にきって見せなければならない。
    ごまかしの削減ではなく4割ほど削減するべき
    次に完全に保護されている国家公務員に対する歳費の削減をしなければならない。
    民主党のマニフェストでは、2割であるが3割は必要と考える。
    まったくもって民間企業との不平等感は強く感じ、
    特に官僚に対しては、天下りを含め自分たちの保護ばかり気にしているようにしか世論の目には
    写ってこない。国民も消費税が必要であることは、わかるが
    このような問題があっては、納得するはずがない。
    真剣に財政を削減したい気持ちがあるかどうかを問われるのは、官僚たちにあると思う。
    それをはっきり理解しないといけない。

  4. 本年度はまだ確定していませんが、2009年まで実質GDPは上昇し続けているのに、税収が思わしくないことこそ問題にすべきではないでしょうか。デフレ下で安易に消費税のような税を引き上げればどうなるかは、橋本内閣の時に経験済みです。
    そういえば、消費税の増税を決定したのも村山内閣、社会党政権でしたね。この国の左翼政権は庶民から税金を取るのが本当に好きですね。民衆を弾圧する体質というものがあるからでしょうか。
    閑話休題。いずれにせよ、年200兆円を越える特別会計の使途が不明朗なままで税金だけ上げろと言われて、はいそうですか。と肯くのは馬鹿のすることでしょう。

  5. selenekeikaku より:

    日本の財政破綻は、もはや懸念されるとか問題視されるとかいったようなレベルの話ではないのではないでしょうか。これまで、様々に議論が行われ、対策が考えられてきたのを我々は目撃してきたわけですが、結局何も変えられずにここまで来てしまった。それよりもむしろ、財政破綻を確実とみて、いつ破綻させるのか、そして破綻した後にこの国をいかにまとめていくのかを決める段階に来ているのではないかと思います。
    危機をあおる書籍や自己防衛を促す本など、このところ非常に多く出て来ているようですが、国家財政が破たんした後に我々はどう生きるべきかというピクチャーを本気で描いているものは皆無です。それもそのはず、それら著者自身は若くはないから本気になどなれない。我々のような20歳代の人間であれば、失うものは少ないわけだから、国家破綻だろうが預金封鎖だろうが何でも来いという気持ちでいる人も多いと思います。いやむしろ、破綻や混乱はウェルカムでさえあります。
    では、その後にどういう社会の仕組みを作っていくかを考える段になったら、年配者ではなく、やはりこれからの時代を生きる人間が意思決定をしなければならんのだと思います。