グルーポンの正月おせちに思う

山口 巌

一般の人は此の件どう見てるのだろうか?推測するにグルーポンにある程度の理解があり、ある種の危惧は感じながらも好意的に観ている者に取っては「やっぱりな!」と言う事だろうし、悪意、色眼鏡で観ている者は「それ見た事か!」と言う事だろうと思う。ITに拠り従来不可能であったビジネスが可能に成るのは頭では理解しているものの、供給サイドから観れば商流が変わるだけの事で、本来@1万円で売るべきを@5千円で売り、しかも半分の@2,500円をグルーポンに上納すると言う仕組みに抵抗があるし、ある種危うさを感じる訳である。


そえにしても本来@1万円の売上が無ければ成らない所、@2,500円でも採算が取れると言うのは一体どう言う事なのか?一番判り易い例は、利益率が高いと言う事だが競合商品がある場合は実質不可能である。

技術的に可能なのはダミーで競合他社を作り、価格サイトに登録すると言うものだが此れは明らかに「景品表示法」に抵触する。最近の実例はバイク王の同様行為であり価格サイトは閉鎖されたと聞いている。

次に考えられるのは、商流として現在リアルな店舗で販売しているのだが店舗当たりの経費(固定費と販管費)が高いと言う場合である。此れは取りも直さずその商品が余り売れていないと言う事なので一回だけならビジネスとして成り立つかも知れない。

唯、商品が売れないのには商品として魅力が無いと言う厳然たる事実が有る訳で一回きりの本当の意味での「フラッシュ」ビジネスとも言える。
どうも本来あるべき継続的な売り手と買い手の相互メリットの存在が見えて来ないのである。

とは言え、この仕組みが荒唐無稽かと言えばそうでも無い。住友商事が運営し年間1千億円以上の売り上げを誇るジュピターのショップチャンネルは定価より大幅に値引きを行い、更に売上代金の半分を媒体費用として徴収すると言うグルーポンとほぼ同様のスキームと聞いている。

取扱い商品は無論,価格Comで調査可能な物は具合悪く、ジュエリー、ファッション、ビューティメーク、インテリア、ある種食品とか原価が見え辛く商品自体がユニークで競合商品との比較が難しい物を品揃えしているようだ。

そして、業界関係者から聞いた話であるが、此の有象無象の商品を売る為の仕掛けが色々と工夫されている。対象は、30代~50代の主婦。仕掛けの第一はテレビのディスプレイを通じて商品訴求する事で信頼性とブランディングを演出している。

次に過去それなりに顔の売れた俳優、コンパニオン、DJ、更には宝塚のOJをを起用すると共に常連とも成れば贔屓の出演者に電話でのトークも可能と成り此れが此のチャンネル視聴者のステイタスらしく此の為に定期的に購入するのだそうだ。

最後の仕掛けは残り50個、30個、10、9、8、、、、のカウントダウン。どうもこう言う一連の仕掛けで30代~50代の主婦はその商品を自分は本当に必要としてるのか?価格は妥当か?と商品の購入に当たり当然あるべき「理性」が何処かに行ってしまい結果コールセンターに申し込みの電話を入れるのだろう。

個人としてこう言うビジネスモデルをどう思うかは別にしてそれなりに良く工夫され、一定の評価を得ていると思う。

扨て、今回のグルーポンのおせちで「ネットの危うさ」とかの論調を目にするが、そう言うレベルでは無くつくづくお粗末な話だなと思う。噴飯ものの話とはこう言う物なのだろう。要は金に目がくらみ受注したのは良いが、食材を実際に調達する段階で支払に必要な金額が判明し蒼く成って質を落とし、種類を減らす事で形振り構わず採算を取りに行ったのでは無いか?結果、「羊頭狗肉」の平成版実例を作ってしまった訳である。

納期が間に合わなかった点は、論評する気にも成らないが生産能力を度外視して受注したと言う事であろう。作り置きが効かない商品ならばあり得る話である。

グルーポンのビジネスモデルが今もって判然としないのは、そもそも定価の所に仕掛けがあって本来@2,500円の商品を恰も@1万円の商品の如く信じさせ、此のある種イルージョンを使って大量に売り捌く以外成り立たないように思える点である。

そう考えれば、メーカーの商品であれ、旅館の空き室であれ、大量売れ残り商品の処分以外は余り近付か無い方が身の為かも知れない。

山口 巌
ファーイーストコンサルティングファーム 代表取締役

コメント

  1. buzz より:

    いやいや、2500円じゃ明らかに赤字でしょ。それでもこういうサービスを利用するのはプロモーション・広告費扱いだからでは。
    毎日更新されるクーポンは多くの人がチェックするわけで、露出という意味でも効果はある。
    それに加え、赤字とはいえ一定の収益は見込め、顧客も得られる。
    ただの広告なら効果保証は一切無い。
    200件売って10%の人がリピーターになってくれたら御の字でしょう。

  2. yamaguchiiwao より:

    buzz様
    コメントありがとうございました。成程、お試しですね。スパーの食品売り場の試食と同じようなものと考えたら判り易いかも。確かにありですね。
    こういう販促直結のマーケテイングが主流に成るとマスメデイアとか広告代理店ますます干上がるように思いました。
    山口 巌

  3. worldcomw より:

    定価2万を1万で売って5千を上納、手元の5千円で2万円の仕出しを作って配送、ですよね。
    従来の飲食店なら食材原価は20%~25%くらいなので、
     ・店の持ち出し : 人件費・償却費
     ・コストダウン : 宣伝費・一括受注による合理化
    これくらいを勘案して、店が暇な空き時間に計画生産するのが、本来のスキームでしょう。

    ただ、最近は食材原価が40%に近いような薄利多売の飲食店も増えています。
    そういう店がグルーポンを使わずに普通に作った1万円のおせちと較べると、
    見劣りするのは当然です。というか、購入者はそういう比較をしてきます。
    でもそれだけなら、返金するほどの騒ぎにはならなかったでしょう。

    やはり経営者にセンスが無かった、ということに尽きるのではないでしょうか。

  4. yamaguchiiwao より:

    worldcomw様
    コメントありがとうございました。その通りと思います。どうも考えるに此のシステムが巧く稼働するのは①.大量の売れ残りを手間、コストかけず売り捌き例え少ないとは言えキャッシュを手にする。②.お試し、試食に徹しプロモーション、リピーター創造の為のコストと割り切る。
    此の2点かといろんな方からコメント戴き考えるに致しました。
    山口 巌

  5. bobbob1978 より:

    グルーポンは元々リスクヘッジのためのシステムであったはずです。
    「食材を仕入れたはいいが、このままでは刷けそうにない。腐らせるのは勿体ないから、利益度外視で客に提供し宣伝に利用しよう。」
    「倉庫で保管するより、利益度外視で提供し宣伝に利用しよう。」
    このような客商売のリスクヘッジをソーシャルメディアの即時性を使ってマーケティングに転化するのが元々のグルーポンのビジネスモデルです。ですから、本来なら今回問題になっているおせちの件のように積極的に商売に利用するようなシステムではないのです。今回の件はグルーポンという最新のマーケティングシステムが、消費者だけでなく企業側にもまだ理解されていないために起こった騒動であると思います。

    積極的に商売に利用するには現在のグルーポンのマージン50%は高過ぎます。今後競合他社がこの市場に参入し、このシステムが洗練されて行けばマージン10%やそれ以下のサービスも登場するでしょう。そうなればリスクヘッジをマーケティングに転化するだけでなく、積極的に商売に利用出来るようになるのではないかと思います。

  6. takejune より:

    グルーポンの手数料が50%って、どこ情報ですか?
    なんだか、出所の不確かな情報が拡散しているような気がして恐ろしい感じがするのですが。

  7. yamaguchiiwao より:

    bobbob1978様
    何時もコメントありがとうございます。私もそう思いますね。
    山口 巌

  8. bobbob1978 より:

    http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20100906/216125/
    「料金体系は、売り上げを案分したクーポンの販売手数料のみ、という非常にシンプルなものである。料率は交渉次第だが、本家グルーポンでは「販売額の50%」が定価である。」

    とのことです。日本のグルーポンの手数料に関する確実な情報は見つかりませんでした。

  9. hosomichi0831 より:

    グルーポン形式のビジネスの本来の姿は、

      ディスカウントして売ることによって商品を提供し、
      起業のの認知度をあげ、商品の良さを認知してもらう

    ことだと思います。

    このルールに忠実に沿っていれば、
    消費者も店舗もクーポン業者も得をするという理想的な状態なのでは。

  10. mzch より:

    元々定価2500円のコースを5000円と表示して、50%OFF! 2500円としたところもあったようですよ。半額東京は9月に定価6000円としていたカジノ風遊び+コース料理を、定価9000円と表示して販売してますしね。歴とした不当表示でしょう。早晩廃れるんじゃないですかね。

  11. livedoon2 より:

    みなさんのコメントと同様ですが、私もこのビジネスでは店舗側としては利益度外視(=宣伝効果重視)だと思いますね。
    ただ、グルーポンのようなネットを使ったサービスの賢いところは、そいういう店舗からの需要を探し当て、消費者の需要とマッチさせた点だと思います。

  12. yamaguchiiwao より:

    コメント戴いた皆様
    多くの方から酷い目にあった実際の体験談であったりフラッシュビジネスを実際に手がけられてる方から今回の件について詳細な情報を戴きました。一旦の結論としてはフラッシュビジネスはありだけれど商品の選定が大変大事でどの様に使いこなすか充分にそして詳細検討しないと今回の様な事に成ると言う事です。
    山口 巌