日本航空の歴代塗装から、戦後日本の歩みを振返る

石川 貴善

本日の報道で、日本航空がかつての「鶴丸」ロゴを復活し、再来年への再上場に向けた取組みを発表しました。創業時や全盛期の志と、日本の空を担う原点に立ち戻ると思われます。
歴代の機体塗装は、何代かに分けて行われていますが、それぞれに戦後日本の歩みと時代の匂いを感じ取ることが出来ます。


<歴代の機体塗装>

1)初代・・・戦後、日本の空は占領下に置かれたものの、当初ノースウエストに運行委託しながら、会社が立ち上がっていった時代

2)2代目・・・機体前部に鶴丸ロゴが入りながらも、機体の名前が有名となり、「よど」「富士」「箱根」「ききょう」など、プロペラからジェット機に移行していく時代。高度成長とメイドインジャパンの輸出の時代に伴い、北周り・南回りの世界一周路線や国内幹線が出来始めた頃。

3)3代目・・・ジャンボ機導入を機にした、鶴丸のあまりに有名なデザイン。同時に制服も変更し、同社全盛期と大量輸送時代の幕開けに。
と同時に会社組織もきしみを見せるようになり、85年の御巣鷹における墜落事故を機にデザインを変更。

4)4代目・・・今までのデザインの影響を持ちながら、半官半民から完全民営化を迎え、ビジネス出張などを意識したややモダンな意匠に。

5)5代目・・・日本エアシステムと経営統合後、太陽のアークを描いたものの国内では単純に「赤社」「青社」と呼ばれた時代。
同時に世界同時多発テロ後による航空不況・国内ローカル線の苦境・経済のグローバル競争に伴う海外からの蚕食・運行トラブル・原油高などの内外におけるきしみを受け、経営が悪化していった時代。

そして今回の発表、ということになりますが、改めて機体のデザインを振り返りますと、2代目塗装は高度成長の中の日本でアジアの新興国として世界に展開していく時代の息吹を感じ、3代目はジャンボ機導入に合わせ、羽田や成田では日本の情景そのものとなり、海外では旅行客や出張・転勤先のビジネスマンが懐かしさを感じるなど、大きなインパクトがありました。

逆に経営統合後の「太陽のアーク」は、スマートですっきりしているのですが、特にジャンボ機では殺風景で冷たさを感じるものでもありました。逆に政府専用機に”日本らしさ”を感じるものでもありましたが、乗客だけでなく、乗員のモチベーションにも大きく影響したのではないかと思われます。

どの企業にも企業風土・社風があるのですが、今までの強みや関係性を留意しながら展開しないと、顧客の印象や社員のモチベーションにも大きく影響するものでもあります。特に運輸・交通系ビジネスは、デザイン・意匠・塗装などによって経営の状況やインパクトが分かってしまいますので、長い目で見れば歴史の法廷に立たされる、ということを念頭に置く必要があるかもしれません。

写真は、2001年の経営統合直前のものですが、この頃が最後の輝きだったと思えます。同時に今の日本は閉塞感が漂っていますが、案外リセットしていったほうが、新たな展開が望めるかもしれません。