トリポリ市内で米英メディア3社と会見したカダフィ大佐は、会見に参加した米ABCによると、「国民は私を愛している。私のために死ねる」と本当に言ったらしい。
更に、彼に反発しているのはテロリストに操られた一部の勢力に限られ、軍による攻撃もこの掃討に限定していると。
一方、イエメン、チュニジア両国の特命全権大使を経験された野口雅昭氏の記事によれば、今回の迅速且つ大掛かりな黒人傭兵展開の背後にはイスラエルの存在がある可能性を否定出来ないと。
余り信じたくはないが、仮にこれが事実であれば反政府運動は泥沼化し、近代兵器で装備された黒人傭兵に石と棒で立ち向かうリビヤの民衆は虐殺されることになる。テロリストと言う汚名を着せられて。
こういう展開になれば、中東諸国民衆のカダフィ大佐やイスラエルへの憎しみは尋常のものではなくなるであろう。
イスラエルの実質的な守護神であるアメリカへの反米感情も沸点に達すると予測する。今回のリビヤ動乱がなくても、世界が反対するパレスチナへの入植を決して止めようとしないイスラエルと、飽く迄、そのイスラエルを支持し続けるアメリカに対する怨嗟のマグマは爆発寸前である。
サウジ、サウジに雁行する湾岸諸国の前途も暗い。オバマ大統領とクリントン国務長官はこれらの国に対し、更なる民主化を求め民意を尊重する事を繰り返し要求している。
しかしながら、その民意こそが反米であり、アメリカと袂を分かつ事なのだ。最近、アメリカ政府は自分達の発するメッセージの意味を理解してないのではと訝しく思うケースが実に多い。
アメリカの対中東外交は、ここに来て、自家撞着の罠にがっちり捕捉されてしまった様だ。
アメリカの後ろ盾なくしては、国を統治出来ないサウジの王様の眠れない夜は当分続くと思う。
この記事も同じく興味深い。そして、これからイギリス政界を揺るがす大スキャンダルに発展するのではと危惧する。
Blair氏の首相時代そして首相を止めてからの行動には相当問題がありそうだ。
第二次世界対戦以降、中東の安定とかキャンプデービッドの合意による平和への道と言った、ややこしい問題はアメリカに丸投げし、イギリスのみならずヨーロッパの国々は、国、企業そして政治家個人を含め、中東の独裁政権の弱みに付け込み、私利私欲のみを追及したのではないだろうか?
軍事産業、その他多くの大型プロジェクトでの経済合理性を無視した受注や石油利権と言った所で、問題が続々出て来る気がする。
リビヤ問題は拡散する中東問題の縮図かも知れない。
山口 巌
コメント
今日の朝日新聞朝刊に中東問題専門家の小松啓一郎氏の解説が面白い。フランスはブルカの着用を禁止する法律を準備中でアルカイーダの目の敵となっている。チュニジアは親仏でフランスのアフリカ進出の橋頭堡となっていた。チュニジア革命の背後にはアルカイーダがいた。欧州と連携を深めるリビアが次のターゲットになってもおかしくなかったと小松氏は言う。カダフィも反政府運動はアルカイーダの扇動によるものだと言っている。真相は不明だが毒をもって毒を制するでイスラエルが黒人傭兵をカダフィに斡旋しても不思議ではない。
小松氏はロンドン在住で治安情報を企業や各国政府へ提供しているのでガセネタではなかろう。