今、優良企業が日本から出ていくべきみっつの理由

藤沢 数希

東日本大震災、福島第一原子力発電所での事故を経て、日本はいよいよ迷走をはじめた。この最大規模の天災に立ち向かう勤勉でモラルの高い多くの市民とは対照的に、日本の政治は迷走し、そして一部の声の大きい団体がいつものように経済の復興を阻んでいる。筆者は、日本の優良企業は、天災から人災へと変わりつつある現在の日本を離れ、アジアへそして世界へ羽ばたいていくべき時だと考えている。以下に、そのみっつの理由を述べる。


1.日本は優良企業にとって税金が非常に高い

同じ仕事をして同じお金を稼ぐなら、手元にたくさんお金が残る方がいい。つまり税金は安い方がいいのである。これは自明なことである。ところが日本の税金はアジア諸国の中でべらぼうに高い。特に高額所得者に対する税率は、懲罰的である。

出所: KPMGのウェブ・サイトを参考に筆者作成

この問題を解決するひとつの方法は、企業活動の多くを税金の安い国に移すことである。日本の製造業は、すでに多くの工場を人件費の安い中国やベトナムなどに移しているが、今後は本社機能や研究開発の拠点も海外に移していくべきだろう。経営者や優秀なエンジニアなど、高額報酬を受け取る人材は、香港やシンガポールなどに移住することにより、税引き後の報酬を大きく増やすことができる。

2.高齢化が急速に進行し、優良企業はより多くの社会保障費の負担を肩代わりさせられる

これから日本では急速に高齢化が進んでいく。社会保障費は現役の労働者が負担するので、年金生活者と現役労働者の比率が、税負担の点において決定的に重要なファクターである。

出所: 国立社会保障・人口問題研究所のウェブ・サイトより筆者作成

上の図を見てもらえばわかると思うが、日本は今後この比率が急速に悪化していく。つまり重い税負担だ。また、日本は伝統的に効率よくお金を稼ぐ個人や企業に対して非常に手厳しいことで知られている。よって今後増大する社会保障費をまかなうために、高額所得者や高収益企業が狙い撃ちされる可能性は極めて高い。つまり今でさえ他のアジア諸国に比べて高い税率は、今後ますます高くなるのである。

一方で、低額所得者や赤字法人には今後も有利な税制が維持されるだろう。高額所得者、高収益企業はアジアの企業誘致に熱心な国で活動し、低額所得者や低収益企業は日本に残る、という住み分けが、各個人の厚生を高める上で重要になってくると思われる。

またアジア諸国の多くが優良企業を誘致するために、個別交渉によりさらに税率を下げることを行っているので、日本でブランドを確立した優良企業はさらなる低税率を享受できよう。

3.エネルギー政策が迷走をはじめた

税金、労働人口の減少に続いて、さらに大きな問題がエネルギー政策である。ほぼ全ての化石燃料を国外に頼る日本は、過去に原子力に力を注いできた。しかし福島第一原子力発電所の事故により、過去のエネルギー政策が否定されてしまった。過去の原子力への莫大な投資は、今後は不良債権化する可能性がある。現政権は、中部電力に浜岡原発の全面停止を要請し、浜岡原発は停止することになった今後は定期点検中の原発の再稼働も困難で、電力不足は恒常的な問題になろう。これは特に製造業にとって大きなハンディ・キャップである。また実現の見通しが立たない再生可能エネルギーに多くの補助金を投入するので、電気料金は必然的に上昇することになる。

筆者は、税制、労働人口の急速な減少、そして電力不足の恒常化の3点から、日本の優良企業は海外展開を加速させるタイミングだと考えている。

参考資料
震災後も変わらぬニッポン、アゴラ
所得税はフラット10%にして大幅な税収アップ、アゴラ

コメント

  1. 東京電力は法人税の安い国に何で出て行かないのですか?カズさんは何で所得税の安い国にとっとと出て行かないのですか?個々の企業や個人において、出て行かない(出て行けない)理由というものが税の高さを凌駕しているだけのことであり、その限界まで法人税、所得税というのは高くなるだけの話だと思います。

  2. mafarava より:

    >東京電力は法人税の安い国に何で出て行かないのですか?

    東電は行政によって既得権が守られた独占企業、日本でしか収益を上げられないのだから海外に出て行くわけが無い。

    >カズさんは何で所得税の安い国にとっとと出て行かないのですか?

    藤沢氏は海外に出て行くほどの高額所得者では(きっと)無いのでは?w

    しかし、こうなってくると、日本の稚拙な言語教育は海外移転を阻止するための周到な策略ではなかったのかと疑いたくなってくる・・・

  3. backstreet0219 より:

    トヨタ自動車CFOが決算発表の場でうっかり発言していました。
    ユーロ安、ウォン安に対抗するためには、日本国内でものづくりする事に限界を感じると。