製造業のアジアシフト

小谷 まなぶ

3月の震災後、日本の製造業が、『アジアシフト』するために準備を始めている。


その理由は、『電力不足・円高・増税』の三重苦が原因だといわれている。今まで、国内で出来る限り製造を続けると考えられてきた自動車産業も、アジアシフトの考えは、強く、部品供給メーカー、また、周辺機器を販売しているメーカーまでも、中国、タイなどに現地法人を作り、商品の供給体制を作る動きが活性化している。
 
 最近では、人材紹介会社では、アジアシフトに対応でき、即戦力になる人材のヘッドハンティングの依頼が増えているという話を聞く。
 製造業の海外進出といえば、以前は、3年~5年かけて、日本の製造システムを海外に技術移転できれば良いという考えで、スローペースで展開してきたが、今回は、時間的も、そんな余裕をもって行えないというのが本音だという。
 なぜ、そこまで、アジアシフトを急がなければならないのか、その理由に、急激な為替変動の速度に、製造業の対応がついていけないというのが大きな理由である。
 日本国内での製造コストを考え、コスト削減に努力しても、数ヶ月で、10%~20%の円相場が変われば、契約時の計算と、支払時の計算がまったく違ってくる。円建てで海外との取引をするのが厳しい状況になる。
 また、震災後、止まらぬ円高の結果、海外で得たドル建ての売り上げを、日本円に両替するチャンスをなくしているのである。また、今後、日本では増税が検討されていることも考慮しても、日本に売り上げのすべてを持ち帰ったところで、増税の課税対象になるので、それを避けたいと考える経営者もすくなくない。日本企業が、日本をベースにしたビジネスがあまりにも厳しくなったことで、悲鳴を上げている現状あり、アジアシフトを急務としている現状がある。
 しかし、ここ数日の株価下落が、アジアシフトをする企業の先行きをどう決定するか、悩ます原因になることは、事実である。この先、産業停滞が起こる可能性が否定できないからである。秋からの動きに注目したい。

■小谷まなぶの中国ビジネス奮闘記(オフィシャルブログ)