ジョブズ亡き後もiPhone4Sの発売から3日で400万台販売するなど、アップルの快進撃は今も続いています。2007年に初代iPhoneが発売されてからの好調さで、過大評価な面もありますが、1997年の復帰直後に「iMac」や「iPod」などを出した当時、「ただの色違いのパソコン」「パソコン分野から降りた」と言われてきました。
ジョブズがアップルへの復帰の際、ソニー共同創業者盛田昭夫氏の死に哀悼の意を表し、「トランジスタラジオ・トリニトロン・ウォークマンなどといった革新的な商品開発を、アップルに大きな影響を与えた」と賞賛した時代もありました。その製品思想は「ライフスタイルを変える・小さくカッコよい」と、ある意味では全盛期のソニーのコンセプトを昇華している面が強く、「アップルは2000年代のソニーである」とも言えるでしょう。両社の以下の歩みを見ますと、
主だった内容をピックアップしましたが、ソニーもPS2までのヒットやアナログ部門での健闘もあるものの、「組織が巨大化して大企業病が顕著になっているソニーを背景に、間隙を縫ってアップルが躍進」していることがうかがえます。逆にアップルが近年急成長している事業分野は、本来ソニーが順調に乗り出していれば、ここまで大きくならなかったでしょう。
iPodやiTunesに似た事業は、ハードとコンテンツの関係や音楽配信の歴史からソニーが先に始めてもおかしくない状況ですが、音楽配信システムと携帯プレイヤーを開発できず、当時開発していた部門をつぶしてゲーム系の組織に統合し、プロジェクトが空中分解した経緯があります。またそれ以外にも
・当初MP3をサポートしなかった
・iTuneストアにソニー関連のコンテンツは一部しか配信していない
など、もともとビデオテープの規格やメモリースティックなど、独自規格を追い求める傾向がある経緯から、オープン戦略は難しい面がありますが、ある意味で今の日本の状況を凝縮した印象は否めません。結局のところはリーダーシップや“人間系”のところが問われてきますが、
・肥大化した組織・・・現場レベルでアップルとソニーはあまり変わりなく、ストリンガー会長の就任当初から縦割り組織を改め、グループ内で近い事業分野やシナジーを活かす横串しにしているものの、実際には活かしにくい環境に。
・社内政治と頻繁な組織改編・・・ソニーも色々な事業分野で、単発ではクリーンヒットを放ち、個々では魅力的な商品も少なくないものの、前から使い続けたユーザーにとっては、あまり脈絡の無い仕様変更やモデルチェンジも、その背景の1つに、頻繁な組織改編も。
などといった形で、本来の日本企業の得意分野がイノベーションではアップルに引き離され、また価格の安さでアジアのメーカーに迫られるなど、日本の企業統治が大きく問われています。