東日本大震災以降、地震保険を検討しながらも実際の加入を躊躇する方も多いと思います。そこで地震保険の制度などを整理したいと思います。
地震保険とは、地震・津波・火災など、地震が原因で居住用の建物・家財の損害が発生した場合に支払われる保険のことですが、火災保険とセットで加入する必要があります。また、地震保険の契約期間は5年が最長となっており、たとえば10年満期の火災保険に加入した場合でも、地震保険は5年毎に再加入する必要があるため、保険料は割高になりがちです。
一方、火災保険の保険金額の30%~50%の範囲で地震保険の保険金額が決められます。すなわち火災保険の保険金額の50%が地震保険の上限となり、さらに建物は5000万円、家財は1000万円が最高補償の限度額と決まっています。
また保険の対象である建物・家財が全損の場合は地震保険の保険金額の100%、半損の場合は50%、一部損の場合は5%が支払われますが、いずれも時価(経過年数による価値減少分を引いた額)が限度となるため、自宅が倒壊したような場合でも、自宅が元通りに再建できる金額が下りることは期待できないでしょう。また、全損・半損・一部損の認定基準も明確に定められているため、自宅のほんの一部が地震により破損したような場合は、保険金が下りない場合もあります。実際に阪神・淡路大震災の場合は1件あたり平均100万円程度、東日本大震災の場合は平均158万程度と、決して補償が手厚いとは言えないのが現状です。結果として、地震保険の加入率は、全国平均23.7%(平成23年3月末現在)にとどまっております。
さて、地震保険の制度はどのようになっているのでしょうか。保険契約者が損害保険会社に支払った保険料は、損保各社が拠出して設立した日本地震再保険株式会社に再保険され、日本地震再保険株式会社はさらに政府(地震再保険特別会計)などに再保険をし、超巨大地震の場合は、5.5兆円を限度として、政府が95%、民間が5%を負担する仕組みとなっております。
しかし、東日本大震災前に官民合計で2兆4000億円あった保険の支払準備金は、震災による保険金の支払総額が1兆2000億円に膨らんだため半減しており、新たな震災が起きた場合に保険金の支払いが滞る懸念もあるようです(日経新聞2011年10月19日)。内閣府が想定する首都直下型地震の場合、経済被害約112兆円(直接被害66.6兆円)という想定もありますので、支払準備金が1兆2000億円、5.5兆円が限度額というのは、いささか不安を覚えますし、実際、支払われる保険金の総額がその限度額を超える場合は、制度上、契約ごとに保険金が次の算式により削減されることがあります。
・支払われる保険金=支払われるべき保険金×(総支払限度額÷支払われるべき保険金の総額)
このようなことから、地震保険は、満足行く金額の受取が難しくなる場合も多いため、住んでいる地域の特性、マンションの築年数、津波の危険性がある場所かどうかなどの総合的な判断により地震保険への加入を決めても良いのかもしれません。
例えば東京都の場合、「あなたのまちの地域危険度」という冊子を作成しており、ここには、地域の建物の種別や地盤の特性からの「建物倒壊危険度」、出火と延焼の危険性からの「火災危険度」、そして建物倒壊や火災の危険性を1つの指標にまとめた「総合危険度」などが公開されていますし、「地域危険度一覧表」では町ごとに危険度のランクと順位までが公開されています。ご自身がお住まいの地域で同様の資料が公開されていないかを確認するのも良いでしょう。
また、マンションにお住まいの方は、いつ建てられたマンションであるかも一つの指標になるでしょう。昭和53年の「宮城県沖地震」をきっかけに、昭和56年に制定された「新耐震基準」の施行以降に作られたマンションは、阪神・淡路大震災、東日本大震災とも建物の被害は、「新耐震基準」以前に作られたマンションに比べて少なくなっていますし、また阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、建築基準法は2000年にも改正されておりますので、より新しい物件であれば安全度が増していることでしょう。
「東日本大震災 被災状況調査報告」より抜粋