英語だけの授業は成り立たない大学の中身とは?

鈴木 和夫

日本人の英語力が低い理由は、とにかく学校教育にあります。


北海道教育大学の宇田川拓雄教授が新聞に書いた記事では、英語だけの授業にこたえられるのは、大学生全体の3%~5%程度という内容になっていました。人数でいえば、1学年で2万人前後となり、院生を入れて10万人ほどが、英語だけの授業に対応できるということらしい。

「函館校の英語圏の博士号取得者は85人の常勤教員中2人しかいない。英語で授業が可能な教員は全体の5%程度であろう」と書いてあります。この数字を全体に当てはめると、大学生は全国で289万人。教員17万人にいます。そのうち5%程度が対応できると推定してみますと、全体からすると15万人となります。

つまり、英語で対応できる大学教員は全国で8000人。英語の講義を受講できる学生は14万人となります。

ただし、ハーバード大のサンデル教授のようなディベート形式の授業では、さらに上級の英語が必要とされ、上位3%で推定すると、教員(5000人)、学生(8万7000人)を合わせて9万人程度になりそうです。もっと少ないかもしれません。

・TOEICでは解決できないディベート力 

英語が話せるのではなく欧米流の授業では、子どものころから「なぜそうなるのか?」「なぜそう考えるのか」「私は、思うけど、あなたはどう思うか?」と立て続けに意見を求められます。

こうした訓練は、日本の教育では徹底していません。まして英語でこうした授業はほんの一部の大学を除けば、実施されていないのが現実です。

こうなうると、学生、社会人の中でTOEICバカをつくりつつあり。英語教育は、今後さらに捻じ曲がりながら、世界やグローバル社会が求める水準とはほど遠くなるでしょう。

低い、話にならないと結論づけることは簡単ですが、この先生は就職も国内だけを目指し、でさらに英語も大して使わない職場だから、「英語での授業の可否を考えるには、研究大学と中堅大学の違いや学問分野の違いも考慮する必要がある。理系大学院では英語で研究するのが普通だが、文系では研究者コミュニティーがグローバル化しておらず、日本語だけの世界に安住している例が多い。学生も教員も、仕事や就職のために必要でなければ苦手な英語による授業を敬遠するのは当然で、それを強制するのは不毛である」と結論付けていることです。

しかし、現在は英語ができて当たり前のアメリカの失業率は9%程度で高止まりし、EUでは10%。若者の失業率は、その何倍にもなっているのが現状です。

世界的なジョブレス社会が広がっています。そんな中で、語学では英語以外の南米のスペイン語、中国語のできる人材に注目が集まってきています。英語ができてもだめ、ディベートできてもだめ、次なる手はやはりエッジのきいたコンテンツが大学に求められています。
(鈴木和夫 consultant)