仏裁判所が企業向け地図サービスでグーグルに賠償を命じた件に就いては、多分日本国内でも多くの異なる意見がある事と推測する。そして、今の時点では「事実」を「事実」として捉える事が大事なんだと思っている。
【パリ時事】パリの商業裁判所は1月31日、インターネット検索最大手の米グーグルによる地図サービス「グーグルマップ」の企業向け無料提供が独占的地位の乱用に当たるとし、グーグルとそのフランス子会社に損害賠償50万ユーロ(約5000万円)と制裁金1万5000ユーロを支払うよう命じる判決を下した。AFP通信が1日、関係者の話として報じた。それによると、企業向けに地図検索サービスを有料で提供する仏ボタン・カルトグラフ社が、グーグルの無料サービスは競合社排除を狙った地位乱用だと訴えていた。ボタン社の弁護士は「グーグル社の違法性を証明できた。2年間にわたる闘いに終止符を打つ画期的判決だ」と歓迎した。
日本市場でも、地図業界最大手の「ゼンリン社」が同様の問題を抱えていると聞いている。
今となっては、まるで大昔の様に感じられるが一昨年このアゴラ記事で問題の中身を報告した。
今回と類似のビジネスモデルとしてゼンリンデータコム(以後ゼンリンと表記)の対Google地図データの販売を検証してみたい。ゼンリンは地図データをGoogleに販売すると同時に地図データーの上に乗せたWeb上での有料サービスで無料サービスを提供するGoogleと激しく競合している。Googleの無料サービスの地図データーは全てゼンリンからの調達と言うのが従来の垂直統合型商流に慣れた人間には多少理解し辛い所あるかも知れない。ゼンリンに取ってGoogleは無論最大顧客である。それ以外にも地図と言う地味でどちらかと言えば陳腐で有触れた商品をGoogleが扱ってくれた事でメジャーで人気の商品にしてくれた大恩人である。一方、既に述べたがゼンリンの商品とほぼ同じサービスを無料で提供する「悪魔」でもある。従って、ゼンリンは有料商品である自社商品を無料のGoogle商品と明確に差別化しユーザーに対しそのメッセージを出し続ける必要がある。価格設定に就いても何分無料サービスとの競合なので頭の痛い所だろう。想像するに、サービスであれ、コンテンツであれ有料サービスである限り、Googleとの競合は壁打ちテニスの様な物で強い球を打たねば市場で淘汰されてしまうし、強く打てばそれだけ強い球が返って来る訳である。参加者はゼンリンの様に歯を食い縛り返球に追いつき、強い球を打ち返し続けるしかない。
私が疑問に感じ、危惧するのは、これが果たして「地図」という、比較的ニッチな商材に限った事なのか?という点である。
もっと露骨に言ってしまえば、全てのコンテンツは遅かれ早かれグーグルの支配下に入るのでは?と危惧しているのである。
国境を越えて全てのコンテンツを支配すれば、正に怖いものなし、やりたい放題が可能になる気がする。
例えば、この原稿を書いた事でグーグルに取って好ましからざる人物と見做され、私の名前で検索すると、私を誹謗中傷するこんな記事で埋め尽くされないとも限らない。
私等、世の中に何の影響力もないので、どうでも良い話であるが、これが「政治家」となれば話は別である。
「政治家」は突き詰めれば、「票乞食」である。だから、彼らは自分達の職業が「人気商売」である事を自覚している。
テレビカメラの前での一発芸、瞬間芸のみで菅氏は総理大臣に迄登り詰めたのではないか?
グーグルのサービスが、無料で便利な事は否定しない。しかしながら、近い将来、タダほど高い物はないと言う冷徹な事実を、我々日本人は実感として体験する事になるのではないか。
山口巖 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役