大阪維新の会を応援する

池田 信夫

大阪維新の会が次の衆院選の公約にする「維新版・船中八策」の骨子の全文が産経に出ている。表題は「日本再生のためのグレートリセット」。5ページにもわたって読みにくいので、1ページにまとめて注目すべき項目を整理してみた。


目的
・決定でき、責任を負う民主主義
・決定でき、責任を負う統治機構
・自立する個人
・自立する地域
・自立する国家
・現役世代の活性化

1.統治機構の作り直し
・内政は地方に任せる=地方・都市の自律的経営に任せる
地方交付税の廃止
・自治体破綻制度
・国の仕事は国の財布で、地方の仕事は地方の財布で=権限と責任の一致
・地方間財政調整制度=地方共有税制度の創設
・都市間競争に対応できる多様な大都市制度=大阪都構想
・道州制

2.財政・行政改革(略)

3.公務員制度改革(略)

4.教育改革
・教育委員会制度の廃止論を含む抜本的改革
・首長に権限と責任を持たせ、第三者機関で監視
・教育行政制度について自治体の選択制
・学校を、校長を長とする普通の組織にする
・大学も含めた教育バウチャー(クーポン)制度の導入
・生徒・保護者による学校選択の保障

5.社会保障制度
・受益と負担の明確化(世代間格差の是正)
・現行の年金制度は一旦清算=リセット
・年金の積立方式への移行(最低ライン)
・掛け捨て方式(ストックでの所得再分配)
・持続可能な医療保険制度の確立=混合診療解禁による市場原理メカニズムの導入
・持続可能な生活保護制度の確立=就労義務の徹底
ベーシックインカム(最低生活保障)制度の検討

6.経済政策・雇用政策・税制
・マーケットの拡大=自由貿易圏の拡大→TPP/FTA
・産業の淘汰を邪魔しない=産業の過度な保護は禁物
・人は保護する=徹底した就労支援
労働市場の流動化、自由化→衰退産業から成長産業へ、外国人人材の活用
・資産課税=固定資産税は現金化、死亡時に精算(フローを制約しない)
・超簡素な税制=フラットタックス
・減免、特措法などは原則廃止
・脱原発依存、新しいエネルギー供給革命

7.外交・防衛(略)

8.憲法改正
・憲法改正要件(96条)を3分の2から2分の1に緩和する
・首相公選制
参議院の廃止をも視野に入れた抜本的改革

こうみると未整理で荒削りだが、橋下氏の「国家像」がそれなりに見えてくる。ほとんどは1980年代以降、主要先進国で行なわれた(日本が積み残してきた)自由主義的な改革の後追いである。『もしフリ』の柱である教育バウチャー、年金改革、負の所得税(ベーシックインカム)はすべて入っている。

「ネオリベ」だとか「市場原理主義」だとか攻撃する人も多いだろうが、経済学的には常識的なものが多い。これは堺屋太一氏や古賀茂明氏などの特別顧問の影響だろう。憲法改正に第9条が入っていないことでもわかるように、橋下氏は意外に現実主義である。

欧州の状況をみても明らかなように、好むと好まざるとにかかわらず、財政が破綻したら政府の規模を縮小することは避けられない。特に急速に労働人口が減少する日本では、改革が遅れれば遅れるほど「痛み」は大きくなる。

この「八策」が今すぐ国政を動かす力になるとは思えないが、今後10年で多くの政党がこういう考え方を取り入れざるをえなくなるだろう。「維新」とか「龍馬」といったレトリックはいただけないが、少なくとも民主・自民よりましな政党として応援したい。