放射能に関する役立つウェブ情報の紹介—GEPR編集部

アゴラ編集部


アゴラ研究所の運営するエネルギー研究機関GEPRは非営利で、読者の皆さまにエネルギーをめぐる情報を提供しています。

国民的な関心を集める放射能の情報について、役立つウェブ情報をまとめました。図は放射線医学研究所の提供する放射線量のスケールの一覧です。福島原発事故によって拡散した放射性物質による東日本の放射線量による被曝の増加量は、大半の人にとって内部被曝も含め年間10ミリシーベルト(mSv)以下と推定されています。(内閣府・低線量被曝のリスク管理に関するワーキンググループ報告書)これによる健康被害の可能性はほぼありません。

震災から3月11日で1年経ちます。冷静に問題を受け止め、日本の復興のために注力しましょう。


その1)
日本政府・内閣府は昨年11月にまとめた専門家の討議を基に、『「低線量被ばくのリスク管理に基づくワーキンググループ」報告書に基づいた健康への影響とこれからの取り組み』というパンフレットを2月にまとめました。

内閣府の同WGは被曝対策として、「年間20ミリシーベルトの被曝基準」「子供や妊婦への対策を最優先」「地域密着への対話」を打ち出しています。ここでは議論内容を公開しています。専門家による被曝問題についての議論が詳細、かつ分かりやすくまとまっています。

現在の日本政府の政策にはいくつもの問題があります。厳格な食品安全基準の設定により生産物の出荷が困難になり農水産業が打撃を受ける、さらには除染コストを検証せず、国民負担が増加しかねないなどです。しかし、そうしたことを含めて、このパンフレットから政府の対策の現状が分かります。

その2)
文部科学省は、福島を中心に10分ごとにデータを計測、発表し、時系列で見ることのできる「リアルタイム線量測定システム」を2月から運営しています。自分で放射線量を図る動きがありますが、不正確な測定が行われておかしな情報が拡散されがちです。不安に思う方は、まずこのシステムによる観察をするべきではないでしょうか。

その3)
文部科学省は小中学校、高校の「放射線に関する副読本」を公開しています。

これらの副読本では「長期の低線量被曝でも健康被害の可能性は極小である」という、現在の日本に必要な情報についての記述が少ないという問題があります。

それでも、放射線について、分かりやすく、工夫した解説が行われています。それぞれの年代だけではなく、大人にも参考になります。

私たちは放射線を浴びて生活しており、さらに身近にも放射線はあって、工業・医療に利用していることを紹介しています。

その4)
日本の学会も、放射性物質に関する啓蒙活動を行っています。

日本保健物理学会は専門家による、一般からの細かい質問に答える「暮らしの放射線Q&A」という取り組みを行っています。

中には、「2011年3月11日にマンションで換気してしまった。健康への不安はありますか」など、明らかに過剰な恐怖にとらわれたおかしな質問があります。しかし専門家の皆さんは真面目に答え続けています。この活動に深い敬意を持ちます。

誰もが持つ疑問に丁寧に答えているので、必要な方は参照してください。

その5)
世界の核災害について、日本は広島と長崎の原爆の悲劇ゆえにデータ、研究が蓄積されています。放射線影響研究所(広島市)では、原爆被爆者の影響について簡単にまとめています。原爆では遺伝疾患、また100mSv以下の低線量被曝で健康被害は観察されていません。福島・東日本にとって、これはよい情報です。同研究所サイト

その6)
1986年のチェルノブイリの原発事故について、GEPRはロシア政府報告書、国際原子力機関(IAEA)など8国際機関とウクライナなど3カ国、さらに国連の報告書の要旨を翻訳しています。GEPRの報告書のサイトにあります。

チェルノブイリ近郊では、事故後1991年から被曝限度を年5mSvとして強制移住させるという政策が行われましたが。それによる移住で、社会と経済の混乱が大きかったと、いずれの報告書でも指摘しています。

また遺伝疾患、低線量被曝(200mSv)の健康被害は観察されていません。これは福島・東日本にとって、良い情報です。

主に起こったのは事故直後の急性被曝です。その死者は火災のやけど、爆発も含め50人以下です。また放射能に牛乳などが流通したために、子供を中心に甲状腺がんが広がりました。ただし、日本では原発事故後に、福島では同じことが起こっていません。

その7)
こうした情報を参考に、落ち着いて原発事故、放射能に向き合いましょう。GEPRはリスクコミュニケーションのために、研究員を派遣します。必要ならば、ご連絡ください。連絡先はこちら

科学の知見が示すことは、福島・東日本で、「現在の放射線量で健康被害が起こる可能性はほとんどない」ということです。

放射性物質を軽視してはなりませんが、同時に過度に恐れ、それによる社会と個人の負担を広げる必要はありません。今でも過剰に危険を騒ぐ動きがありますが、それは大半が必要のない情報です。

物理学者の寺田寅彦がエッセイで次のように語っています。

「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた」

「正当にこわがり」ながら、冷静に東日本の大震災と原発事故の復興に、全日本人が取り組みましょう。