アウトサイダーにしか見えないこと

池田 信夫

けさ起きたら、またも橋下市長の激しいツイッター攻撃が・・・。こんなふうにネットを活用する行政のトップも初めてだろう。日本にも、新しい時代が来たのかも知れない。

ただ、その攻撃がちょっと単調だ。相手の主張の中身ではなく「実務を知らない有識者」云々という肩書きの話をいくらしても仕方がない。私は、日本の役所や企業の欠陥はむしろ経営者と実務との距離が近すぎることだと思う。本書は、その最悪の見本であるオリンパス事件を「実務を知らない元社長」が描いたものだ。


海外法人の統括責任者から本社の社長に、外国人として初めて抜擢された著者のもとに、不正経理の情報が届く。彼は取締役会でこれを議題にしようとするが拒否され、逆に社長を解任される。そこで彼はフィナンシャル・タイムズなどの海外メディアに情報を提供するが、日本のメディアは取り上げない。

会社の「中の人」が彼にいうのは「あなたには日本の会社はわからない」という謎めいた話だけ。彼は「反社会的勢力」がからんでいるのではないかと恐れて、イギリスに戻る。海外メディアは大騒ぎになるが、会社側は取材拒否。アウトサイダーの彼には何が起こっているのかわからない。

結局、日経新聞などが騒ぎ始めてから会社も第三者委員会を設け、その結果、バブル期の財テクの失敗を過大な価格による企業買収で穴埋めしたことがわかる。しかしこうした奇怪な企業買収案件が、なぜ取締役会で承認されたのか。それを知っていたはずのメインバンクや監査法人は、なぜ総額1500億円にものぼる不正を見逃したのか――それはいまだにわからない。日本の会社の「空気」がそうさせたのだろうか。

海外の企業では、他の企業からスカウトされて「ボトムライン」しか見ないMBA経営者の弊害がよく問題になるが、日本では逆に「空気」に同調するインサイダーの結束力が強すぎ、切るべき事業が切れない。ひどい場合には、オリンパスのように不正経理までやってかばいあう。現場で実績をあげたサラリーマンが、内部昇進で経営者になるためだ。

橋下氏の手法にも批判は多いが、地元で支持されているのは、市民がおかしいと思うことを素直におかしいというアウトサイダーの強みがあるからだろう。その彼が「実務を知らない者が批判するな」とか「おまえの話は課長補佐級だ」といった権威主義を振り回すのは困ったものだ。