関越のバス事故の根本原因 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

このところ奇妙なぐらい大きな自動車事故が多発しています。京都の二件の突っ込み事故、それ以外にもこの1週間で愛知と千葉で同様の事故が起きています。そして今回は関越自動車道でバスの単独事故です。


事故のそれぞれの原因は、

てんかんの発作、少年の無免許居眠り、釣りのことを考えていた、ぼーっとしていた、居眠り

となっています。運転手年齢は30歳、18歳、20歳、24歳、43歳。

カテゴリー分けすると少年無免許、釣り、ぼーっとしていた3人は平均年齢も21歳に満たず一歩間違えば凶器に転ずる自動車の運転に対する意識が完全に欠如していたところに原因がありそうです。また、てんかんの発作を起こしたとされる京都祇園の事件も親や医者が自動車運転は絶対にダメだといい続けていたにも拘らずそれを無視したところはやはり自動車運転の意識欠如と考えても良さそうです。

では関越の事故ですが、これはある意味、日本の社会が引き起こした事件であります。

規模の小さい会社で代替の運転手もいない中、ゴールデンウィークというかき入れ時に無理を重ねていた可能性があります。バスの事故の原因で多いのが運転手のやりくりの問題。そして、長時間労働の挙句、居眠りをしてしまいます。

確かに長距離トラック運転手もかなり無理をしているようですが、こちらの事故はあまり耳にしません。もしもその理由が何かといえばトラック運転手は疲れたら休むことが出来ます。仮眠も取れます。すべて自己判断です。

ところがバスの運転手は40名以上の乗客が乗っており、運転手の挙動を一人や二人、必ず見ているものであり、スピード、運転の丁寧さ、時間運行など細やかなところを常に「監視」されています。しかも後ろから見られる視線というのは心理学的にはかなりプレッシャーがあるものなのです。

つまり、バスの運転手は疲れ方が違うのではないか、という事です。その上、「眠いので仮眠します」とは絶対にいえません。

ですが、小規模のバス運行会社は「頼むよ、人がいないから」という一言で仕事を押し付けてしまうのです。

では何故、人が集まらないか、といえばやはり、きつい仕事だということではないでしょうか?そして、バス運行会社からすれば激しい価格競争でコストを最小限まで切り詰めないと勝てない時代です。結局、それは安全のコストも切り詰めたということではないでしょうか?

日本ではエキストリームを賞賛する風潮があります。ナンバーワンになる為に死力を尽くすということなのですが、それがやや変形して「生き残る」為に死力を尽くすということになっているところが多いのではないでしょうか?ですが、この「生き残る」というのは会社であって社員は討ち死にしてもよい、という事にも捉えかねられません。

日本が生き残りをかけるなら知恵で勝負すべきです。体力ではないと思います。知恵がないところは会社をたたんでいただくしかないと思っています。

痛ましい事故ですが、これは切り詰め過ぎた日本の社会が引き起こした人災であります。どうやったらこれが防げるか、社会への大きな課題になると思います。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年4月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。