傍で見ているともはや誰もが無視できない一大イベントのような様相となっているFacebookの上場。いよいよその日が迫ってきました。日本のメディアでもちらちらその報道を見かけますが、アメリカではメディアがもっと煽っているような感があります。
また、利用者が9億人と多いことからその上場に対して一般市民の反応もさまざまでこれだけ大型上場という割には比較的辛口コメントが多いのも特徴の一つかと思います。例えばアメリカ、Breakoutが出しているアンケートでは上場後、1ヶ月以内に購入するかという質問に対し、「はい」は僅か21%、「いいえ」が79%となっています(「考慮中」という日本的な選択肢がないところに注目してください)。
以前にもご紹介したと思いますが、Facebookを良く思わない層の最大のポイントは個人情報を収益源としているという指摘です。双方、言い分はあると思いますが、このコンセンサスは北米では根強く、バンクーバーでも以前地元紙が一面で批判的記事を取り上げ、つい、数日前もビジネス面トップでネガトーンの記事を配信していました。
次に同社がまだ新規上場を通じた資金調達を必要としているのかということ。これも同社の将来のビジョンと投資計画が出てくればまた変わるのでしょうけど、今の時点ではどちらかと言うと上場に伴い現株主達がいかに巨額の富を得るということへの嫉妬のほうがトーンとしては強いような気もいたします。
さらに厳しく指摘されているのが2010年度第4四半期の収益が1.3ビリオン(13億)ドルに対して2011年第1四半期が1.06ビリオン(10.6億ドル)に落ちていること、さらに2011年年間の収益が4.3ビリオン(43億)ドルのアナリスト予想に対して37ビリオン(37億)ドルに留まった点であります。また、最新の情報では同社が携帯端末を通した収益構造を作り出していないと発表し、懸念材料になっています。
現段階で同社のビジネスがどう展開するかコメントするには時期早尚であるし、上場を控えているため、主要なところは黙っておりますが、正直行方を見ているだけでもその辺のドラマを見ているよりもはらはらいたします。
ウォーレン・バフェット氏は「長期のビジネスビジョンが描けない」ことを理由に興味を示していないとしております。もっともバフェット氏の投資作法はバフェット流として尊重されるもののそれが全てでないことも事実です。コカコーラや鉄道輸送が不朽のビジネスであり、そこに投資の醍醐味があるとすればそれは一つのスタイルですが、コンベンショナルばかりが正しければエンジェル投資家は否定されてしまうし、アメリカが本来築き上げたフロンティア精神とも距離感があるような気がします。
Facebookの上場は28-35ドルのレンジとされていますが、一部アナリストは既に44ドルのoutperformとしているようです。少なくとも立ち上がりは買い越すものの1ヵ月、3ヶ月、6ヵ月といったスパンで落ち着きどころを探すことになるのでしょう。
ちなみに私はFacebookの投資にはまったく興味がありませんので投資家たちがこの一大イベントに一体どのように立ち向かうのか、その行方をスクリーン越しに楽しむだけにとどめておきます。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年5月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。