電力会社は生き残りを懸け自ら努力すべき

山口 巌

石井氏のアゴラ記事、電力会社いじめはやめなさい-狂気を排除し、再稼動と政策の正常化をを拝読。

他人任せは好きではないが、許認可権を持つ枝野幸男経産大臣、世論を煽った橋下徹大阪市長が、「再稼動!」と一言述べ、この「ばか騒ぎ」を終わらしてもらえないだろうか。

と言うのが結論と思われるが、正直余り現実的とは思えない。

民主党に代って政権の獲得を狙う大阪維新の会に取っては、政権の困惑、狼狽こそが密の味の筈である。電力問題が重篤化し、国民の不満が高まる事は、大阪維新の会への追い風の強まりを意味するのではないか?

従って、枝野大臣と橋下大阪市長が握手を交わし、同じ方向を向いて行動すると言う事はあり得ない話と思う。

世間の耳目は大阪維新の会や橋下大阪市長に向いているが、電力行政を破綻させたのは、そもそも民主党政権ではないだろうか?そして、橋下大阪市長はその弱点、矛盾を突いているだけではないのか?

発端は何度も繰り返して恐縮であるが、菅前首相による「浜岡原発」の恣意的な停止である。これが、実質的な破綻へのスタートである。

野田政権への移行後、本来、速やかにこの「浜岡原発」の停止を検証し、検証結果を国民に判り易く報告すると共に、「代替案」を提示しての「停止継続」か、「運転再開」かを決断し、示すべきであったと思う。

しかしながら、何もやれていないし、やろうともしていない。「迷走」が継続しているだけである。菅前首相を批判出来ないからである。だから、物事が少しも前に進んで行かない。

現政権の閣僚、民主党執行部は菅前首相を支持し、「政治と金」を利用して小沢議員の排除にまんまと成功し、ちゃっかりと「ポスト」を得る事に成功した。

しかしながら、経験と能力不足に依る統治能力の欠如が顕著である。おまけに責任感も皆無の様である。これでは、真面な仕事等何一つ期待出来ない。

政府、民主党も事ここに至って焦燥を露わにして、仙谷議員の「日本は集団自殺」発言とか枝野大臣の計画停電発言等の、上から目線で橋下大阪市長を恫喝するが如き発言が連続しているが、これでは国民の気持ちは離れて行くばかりで、所詮橋下大阪市長の引き立て役に過ぎない。

長々と説明したが、要は、橋下大阪市長が「原発再開」に方向転換したり、野田政権がリーダーシップを発揮して「原発再開」を基軸とする、あるべき「電力行政」に回帰する可能性は極めて低いと言う事実を認識せねばならない状況に、我々は直面していると言う事である。

勿論、焦眉の急は夏場の電力不足であるが、例えこれを乗り切ったとしても追加の化石燃料費の負担から、下記原発比率の高い電力会社から、衰弱死に至るは避けられない。

尤も、「地域独占」の垢が染みついた電力会社の事だから、「電力料金の値上げで一発解決」と思っているかも知れないが、何時までもそういう事では困るのである。

さて、電力会社がどうやって生き残りを図るかであるが、野田政権、民主党が頼りにならぬ以上、ここ迄来たら「司法」に縋るしかないのではないか?

以前のアゴラ記事、とち狂った電力行政をどうやって正常化させるか? でも提案したが、具体的には、各電力会社が国を相手取って「原発停止」に依って生じた損害に対し損害賠償を提訴すべきと思うのである。

勝訴に至るか否かは、経営陣の経営判断に於ける任意性の有無と思うが、実質政府に依る強制であり、提訴の価値ありと思う。

繰り返しとなるが、電力会社は野垂れ死にが嫌なら生き残りの努力をすべきである。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役