社長の仕事はアウトプットすること --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

私は一日に最低でも1~2時間は読み物や調べものに時間を費やしています。いくつかの理由がありますがインプットすることでさまざまな事実や情報をいろいろな角度から検証し、ビジネスという形に変えていくためです。

業務の内容は比較的地味なものが多いのですが既存だけで5部門あり現在6部門目の立ち上げ中の上、業種が多岐にわたり、B to BとB to Cが半分半分でそれぞれに戦略を策定しなくてはいけません。


もっとも商店に毛が生えたようなビジネス規模ですから取締役会があるわけでもないし、執行役員制度を取っているわけでもありません。つまり、部門ごとの戦略に対して誰かに積極的に発信するチャンスは普通訪れない、という事になります。これは多くの中小企業が同じ状況にあるかと思います。

そこで私はどこかで必ずアプトプットをすることで部門戦略を意識するようにしています。もちろん、スタッフとの会話の中でその戦略構想をしゃべり、そういう流れの中でこの作業をする、といった事もその一環ですし、顧客とのやり取りを通じて当方の経営方針を述べたりすることもよくあります。

そのために私は年次計画や中期計画といったバイブルを必ず一年に一度は策定、見直しをしており、10ページぐらいの数字が詰まった書き物に残すことから始まります。過去、この書き物を見た人はいません。ですが、私は年に数回読み直し、それに基づき、会社をドライブしています。そして年間計画の達成率を月次の予実算対比表と月次試算表に基づき翌月第1週までに確認し、未達の場合、マネージャー等と協議の上、早期の戦略練り直しを行って経営数字がぶれないようにしています。また、顧客に対しても機会あるごとに私から直接お話しすることをなるべく増やしています。

これら一連の流れはインプットとアウトプットが交互に行われている状態であるといえます。

日経ビジネスの4月30日号で総力上げて特集した「社長発信力ランキング」。これはかなり面白かったと思いますが、特に注目したのは発信力ゼロの会社が実名でランクされていること。発信しない社長の言い訳は炎上、M&A、個人コメントの公私混同…とかなりこじつけ理由で黙っていることに徹しているとのこと。

上場企業はIRを通じて会社の業容、業績を細かい数字にしてほぼ年4回、開示しています。ですが、お気づきになった方もいるかもしれませんが、株主に送付されてくる業績説明書は完全にパタン化された差しさわりのないフォームになっています。(私も業務で書いていた時代がありますので良く分かります。)そこに会社の個性は見受けられません。

一方、同誌で発信力ランクで1位と2位になった孫正義、柳井正両名は積み上げたインプットを自分の言葉でとことん説得できるようにしゃべりぬく、ということに特徴があります。

社長の仕事は発信することです。これは100%間違いありません。その発信は社業でもいいし、精神論でもいいし、営業トークでもいいと思います。発信手段も何でもよいのです。少なくとも会社のトップが何を考えているか分からないそんな会社は今後、世界では生きていけない時代がやってくると思います。この社長ブログもそんな一環でやっている、ととってもらったらよいかもしれませんね。

今日はこのぐらいにしておきましょうか?


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年5月26日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。