ものづくりに付加価値をつけよ --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

ビジネスニュースや雑誌を読んでいると現在の日本経済の苦境に対して「ものづくりニッポン」こそ、日本のあるべき姿、と主張する経営者や専門家は結構多いようです。

私もものづくりを否定はしませんが、それだけではもはや生きていける時代は過ぎていると思っています。


日本経済が低迷している理由を俯瞰すれば、ある一面として中国、韓国というライバルが力をつけてきたこと、価格競争力が低下していること、日本という経済先進国の製造業が「上から目線」(先進国から新興国へ)の商売になっていることがパッと思い浮かびます。

しかもこれらの要因は全て「ものを作る」というプロセスの中で中国や韓国とガチンコ勝負をしていることになります。

私はものづくりだけでなく、付加価値作りをすることがもっと大事だと思っています。それが出来れば日本は圧倒的強みを持つことが出来ると思います。

回転寿司を思い浮かべてみましょう。一昔前は単にターンテーブルの上に寿司が廻っているだけでした。しかし、客はうまそうなものしか選ばず、売れない寿司は表面が乾燥して廃棄処分になり当然ロスが多い状態でした。そこで客からの注文を積極的に受けるようになりました。また、座席はターンテーブルに向かって座るだけでなく、四人掛けなどが出来、注文もすばやく間違いも少なくなるようエキスプレスレーンなるものも登場しました。これらは回転寿司ターンテーブルというものづくりから客がどうやったら更に満足するかという付加価値を加えていった典型ではないでしょうか?

その努力の成果もあり、回転寿司の人気が廃れた感じはしません。まさに「進化する付加価値」とでもいえるのではないでしょうか?

海外でも普及してきたセルフレジ。私もスーパーで並ぶのが嫌いですのでセルフレジに行くのですが、これが最近、かなりいらいらするほど待たされるようになりました。理由は客がセルフレジで悪戦苦闘しているのです。実は北米では「機械化」がアジア諸国のように進んでいません。なぜならサービスは人間がするものであり、それに対する対価を払うという日常のスタイルが身についているからです。

しかしながら最近、スマホやらセルフレジとなると否が応でも機械と対面しなくてはいけないのに機械操作のABCが生活の中で十分に浸透していないため、店員が駆けずり回る、ということになるのです。

セルフレジの機械そのものは良く出来ているのですが、プログラムや使い勝手で不親切だと思われるところがたくさんあります。それは機械をわかっている人が作った機械であって、顧客目線ではない、ということです。日本がものづくりに精通し、且、カスタマーサービスにおいては世界最高水準を誇っているならばなぜ、その二つをマリッジさせないのでしょうか?

どんな人でも簡単に操作できて絶対に満足してもらえる機械です。

私はごく当たり前のことをいっているのですが、もの作りをする人とサービスインダストリーの人が必ずしも意見を交換していないのではないか、という気がします。結果として双方がよいものを持っているのに相乗効果が出ないのです。

日本人が付加価値をつけることは得意だと思っています。それを発掘していないだけのことだけではないと思います。

視点を変えてみると案外、面白いアイディアがたくさん浮かんでくるのではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょうか?


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年5月26日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。