日本の不動産は底入れか? --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

少し古いのですが5月25日の日経新聞に「ゴールドマンサックスが日本不動産投資再開」という記事がありました。その後、フォローの記事を見かけなかったので大きな話題にはなっていませんが、私はこれは重要な意味をもっていると思っています。今、日本の不動産は買いか、ここを考えてみたいと思います。


まず記事によるとゴールドマンがそろそろ日本不動産の投資再開と考える理由は土地価格下落率が落ち着いてきたということです。公示価格などを見る限り、引き続き2%程度の下落は見られますが、下落の幅が収まってきており1~2年のうちに下落が止まり反転する可能性がないとは言い切れない状況にあります。

ファンダメンタル的には少子高齢化、高層マンションの林立などで不動産価値の希薄化が進んでいるので価格的にはネガティブ要因なのですが唯一可能性がある値上がりの理由はインフレであります。

日銀の白川総裁は1%程度のインフレを目指す実施的なインフレ目標の設定を行い、ジワリとデフレ脱却の方向に向かっています。2014年ごろには1%インフレが達成できる可能性は大いにあります。不動産はインフレにリンクしやすいため、物価上昇が生じるならば不動産の価値の底上げは起こりえます。ゴールドマンが目をつけたとしたらこの辺りではないかと思います。

海外の不動産の利回りはかなり低下しています。不動産価格が高く賃貸収入等が充分ではない為、利回りが1~3%程度まで落ち込んでいるところが多いのが実情です。例えば世界でも不動産価格が高いといわれるバンクーバーの場合、例えばダウンタウンのコンドミニアムの購入価格sf当たり700ドル程度に対して賃貸相場がsf月当たり2.2ドル程度ですからここから割り出す利回りは3.77%となります。これは表面利回りであり、実際には管理料、固定資産税などがありますから実質利回りは1%台に落ち込むわけです。

それに対して日本は不動産利回りが世界的に高くなっています。特に個人投資家が中古マンション投資をすれば物件により表面利回り8%程度出せる物件を見つけるのはさほど困難ではないのです。

もうひとつ、海外から見る不動産投資は為替動向に大きく左右されます。今の円高局面をどう見るかということになるかと思います。まず、不動産投資ですから3~5年以上のタームであり、中期的な為替相場を想定しなくてはいけません。

アメリカが製造業復活のためにドル安政策を採り続け紙幣を印刷し続けたとすればドルの相対的価値の下落はありえます。また、ヨーロッパのユーロ存続の問題は一朝一夕には片付くものではなく、今後もこの問題に付き合っていかねばならぬとしたら円資産は悪くない選択肢となり、円の価値は今後もサポートされるかもしれません。

とすれば数年後に円が強まっていれば不動産価格が変わらないとしても為替で大きな利益を得ることができるのです。折りしも現時点で輪転機を回し続けたドルは過剰に市場に出回っているため、あるきっかけがあれば、それが日本の不動産市場に流入する可能性はありえます。ゴールドマンからすればこの辺りがボトムラインのシナリオではないかと思います。

こう考えれば日本の不動産市場は注目するに値すると思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。