今度はどうなる?ヤクルト本社VSグループ・ダノンの攻防 --- 山口 利昭

アゴラ編集部

この時期はどうしても株主総会ネタが増えることになりますが、アコーディアゴルフ社や関西電力社など、とても興味深い総会よりもやや早く、6月20日はヤクルト本社(「本社」までが会社名)の定時株主総会が開催されます。新聞報道等では、20%の株を保有するグループ・ダノンとの提携の行方を占ううえでも重要な総会になる、とのこと。そもそも2000年ころの損失飛ばし事件の際、ダノン社が3%の出資をして、2003年には20%に出資比率を引き上げたようですが、この20%引き上げの攻防は、日経新聞編集委員の三宅伸吾さんの「乗っ取り屋と用心棒」271ページ以下で紹介されています。


同書では、いきなり20%まで買い増したダノン社に対抗しようと、ヤクルト本社が東京の大手法律事務所に相談にいったところ、「このまま頑なに拒んでいたら、どんどん買い増してきますよ。どこかで妥協しなさい」と言われ、2008年(その後2012年まで伸長)までの現状維持協定を結んだことが記されています。その期限が到来した、ということで今後のダノン社の対応が注目されているところかと。すでに妥協案として28%案がダノン社側より出されましたが、これをヤクルト側は頑なに拒否しているそうです。

TOBの可能性も十分にある、と企業法務で著名な先生が(ダイヤモンドニュースにて)おっしゃっておられますし、先の大手法律事務所の先生の助言内容などからも、もはや35%まで買い増しが強行されても文句は言えないように思えます。しかしどうなんでしょうか、グループ・ダノンとしては、今回もそんなに簡単に強硬策に出るようには思えないのです。なんといってもヤクルト本社がノウハウを持つ「BOPビジネス」(開発途上国の比較的貧困な方々に購入してもらい、しかもCSRではなく、しっかりと本業で儲けを出す仕組み)は真似ようとしても真似できなかったのではないか、と。日本では「ヤクルトレディ」さんの販売体型が有名ですが、開発途上国における販路拡大でもヤクルトは一斉の成果を上げているようです。このBOPビジネスはダノン側としても、アジアの販路拡大にとってはどうしても手に入れたいわけで、ここでホワイトナイトでも出てくると、これまでの努力が水の泡になってしまうような気がします。

また、日本ではなかなか敵対的なM&Aは成功しない、ということも認識されているのではないでしょうか。もちろん、ヤクルト「販社」と手を結び、買い増しの脅威が噂されるところかとは思いますが、経営者交代、というところでの利害は一致するかもしれませんが、企業統治の異なる経営陣の姿勢と長年のヤクルトビジネスが、そのまま一致するのかどうかはよくわからないところです。

結局のところ、(これまで以上にダノン社が経営に関与する形で)今回もどこかで妥協することで決着がつきそうな気がするのですが、甘いでしょうかね。これはあくまでも私個人の意見なので、投資判断は皆様方の自己責任にてお願いいたします。M&Aネタでは毎度申し上げるところですが、私は特にこの分野の専門ではございませんので、あくまでもガバナンスに関心を寄せる野次馬的意見、ということでご理解くださいませ。


編集部より:この記事は「ビジネス法務の部屋 since 2005」2012年6月20日のブログより転載させていただきました。快く転載を許可してくださった山口利昭氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方はビジネス法務の部屋 since 2005をご覧ください。