北米では角地にスターバックスがありますが、東京では角地に時間貸し駐車場あり、というのが外から見た日本の姿であります。
東京には街中にやたらと空き地が存在し、その空き地が時間貸し駐車場へと変貌しています。ビジネス街や繁華街に近いところならいざ知らず、いわゆる住宅地の中にかなり点在しています。というより、住宅地であるが故に時間貸し駐車場なのかもしれません。
高齢化と共に住宅も高齢化が進みます。半ば空家のような家も増え、相続問題を抱える物件も多くなってきています(相続税の問題というより相続する子供たちの間で不動産の扱いについてもめてしまい、処分できない問題です)。
更に東京の住宅地では建築しても3階建て、それも斜線制限が入れば3階部分はかなり制約される可能性があるため、いわゆる不動産デベロッパーがビジネスとして開発するにはせいぜい建売住宅ぐらいにしかなりません。一方、建売にしても土地付で4000~5000万円前後するためある程度の企業に安定して勤務している人でないとなかなかローンを組む感じにはなりません。おまけに大体そういうサラリーマンは駅近くの高層マンションを求める傾向が強く、住宅街の戸建ての需要は案外絞り込まれるのです。
一方、空家にしておくと防犯防災上、あまり好ましくなく、結局壊して更地にした上で小遣い稼ぎになる時間貸し駐車場経営ということになるのでしょう。ところがこの時間貸し駐車場、私が東京に行くたびに増えていきます。例えば業界最大手のパーク24では昨年11月から今年5月までの半年の間だけで駐車場台数で3.2%増の15000台増やしています。
では住宅地の駐車場の利用者は誰なのでしょうか? ひとつは駐車場を持たない人たちの月極め。工事業者などの日中の利用などが主力ですが、どうしても埋まらないのが夜間。これも気をつけて見ていないと案外見落とすのですが、このところ、夜間料金の値下げ戦争。夜間料金は大体、夜10時から朝7時ぐらいまでの最大料金ですが、私の実家のある山手線から歩ける距離のところで1年ぐらい前は1500円から上でしたが今では最安値500円でせいぜい1000円程度が実勢になりつつあります。
上述のパーク24の占有率は44~45%程度。日中の占有率が高いとすれば夜間はどうしても空の状態になりやすいということです。しかも時間貸し駐車場は住宅地のあちらこちらに点在するため、地元の人にしかわからないような場所の駐車場は価格的に下げがち。結果として地域全体の値崩れを起こしやすいということになります。
もともとこの駐車場ビジネスは路上駐車の取締りが非常にきびしくなったことを受けた駐車スペースの供給という意味から成長を遂げてきました。しかし、感覚からすれば繁華街を別にすればそろそろ頭打ちのような気がします。空き地は今後もどんどん増え、住宅街に住む人口層は高齢化が進み、自動車の所有率は下ります。今や、マンションの駐車場も空きありの看板が目立つ状況になってきています。車離れがおきている証しのひとつでしょう。
実際駐車場運営会社はレンタカー事業などに派生させて稼働率を上げ、収益構造を改善していく状況になっています。私が仮に日本で事業をするなら、可能であれば、簡易屋根つきにしたり、洗車スペースを作るなどクオリティ向上を図りながら価格の下落に歯止めをかけ、価格競争に巻き込まれる前に対策を打つべきかと思います。この状況ではあと数年もすれば業界の利益率は悪化の一途となり淘汰すら始まる可能性があるかと思います。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。