日本を元気にするソニーの復活 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

家電御三家で私が一番期待しているのはソニーです。パナソニックはもっと現実的な商品を関西テイストの「儲かります」的なイメージで頑張っていますが、クリエーティブなリーダーになる社風ではない気がいたします。シャープについては先日のブログで申し上げたとおりです。


ソニーの株価の低迷振りはほぼ想定どおりで1500円程度の頃から1000円割れまでありうると思っていたのですが、その通りになり現在、回復基調に入りました。ただ、この下落はソニーだけが下がったのではなく、日本株全体が売られたことと外人持ち株比率が高い関係でリスクオフのモードが出ていた際に売られやすかったということであります。

よって平井一夫体制となったソニーに対する評価をするのは時期早尚でむしろその手腕を半年、一年ぐらいかけてみていかねばならないと思います。一方、ソニー社内に於いては内外からのソニー批判の声を当然ながら深く受け止めているとみられ、今までのソニーのプライドはもはや癒せないほどの傷がついているはずです。よって、ソニーの内面からの変化が今だからこそ期待できるともいえるのです。

ではこの一ヶ月ぐらいのソニーの目立った動きをリストしましょう。

オリンパスとの提携は最有力候補に
パナソニックと共同で有機ELテレビの開発を行うことに
7月にネットワークレコーダー&メディアストーレッジ、「ナスネ」を販売予定
ソニーミュージックエンターテインメントを通じてアップルに楽曲を提供
3D表示対応の有機EL搭載ヘッドマウントディスプレー、「HMZ─T1」の生産が追いつかず注文受付中止

このリストには今までのソニーなら出来なかったと思われるパナとの共同開発やアップルに楽曲を提供するなど明らかにソニー内部が変わった事を示す良い事例だと思います。事実、平井社長は事業部ごとの縦割りの組織にメスを入れるために商品戦略と研究開発の組織を変更する取り組み行い始めました。

また、ナスネは専門メディアの商品説明を読む限りエアーボード/ロケーションフリーTVの失敗をうまく改善しているような気がします。エアーボード/ロケフリは「どこでもテレビ」の先例で海外でも日本のテレビが見られるし、録画も出来るというふれこみだったのですが、IPアドレスの固定化や海外の場合、親機が日本になくてはならず、接続の複雑さを含め、「話題先行、事業失敗」の好例でした。

HMZ─TIは映画館の中央の席で大画面をスクリーンを見ているようなまったく新しいタイプの商品で価格も約6万円と決して安いものではありません。ですが、こういう商品がソニーらしさといえます。

そのソニー、不祥事があったわけでもないのに株主総会に9000人も集まるその理由は批判の中に大きな期待がこめられているといっても良いのではないでしょうか?

最後にテレビですが個人的には今年も赤字は止まらないかもしれないと思いますが、テレビは作り続けるべきでしょう。ソニーにおいてテレビとは「持てる資産を表現するステージ」であると考えれば極端な話、損益ゼロになれば御の字だと割り切るぐらいでよいかと思います。

ソニーが頑張ってくれないことには他の日本企業に元気が出ません。そういう意味では平井一夫社長の肩にはソニーの運命のみならず電機業界、ひいてはニッポン株式会社の行方を占う役目があると思っています。

期待しております。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年7月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。