しかし1ヶ月かけて50人ぐらいインタビューした結果、男女ともに「私は軍に強制連行された」という人は1人もいなかった。「口入れ屋にだまされて炭鉱に行ったら、タコ部屋でひどい目に合った」とか「女衒にだまされて戦地に連れて行かれた」という話はあったが、昔の思い出としてカメラの前で淡々と話してくれた。
それではネタにならないので、番組は「告発調」になった。男女とも強制連行はしなかったが、一部の人が自由に帰れなかった事実はある。彼らの運搬や慰安所の管理に軍が関与した事実もあった。そういう書類をもとにして「日本にも道義的責任はある」というのが私のつくった番組のトーンだったが、もう一つの班は慰安婦を登場させて福島瑞穂氏に「これは日本の戦争犯罪だ」と言わせた。
これが大反響を呼んだ。福島氏は「日本軍が朝鮮人にセックスを強制した」という性的好奇心に訴え、他のマスコミにも売り込んだ。特に朝日新聞が「慰安婦が女子挺身隊として強制連行された」という誤報を流したたことが、この問題に火をつけた。これは明白な誤りで、そのとき名乗り出た慰安婦も「女衒に連れて行かれた」と証言していたのだが、のちに裁判では「軍に連行された」と証言をひるがえした。
「従軍慰安婦」は嘘だが、これに象徴される彼らのトラウマを生んだのが日本の植民地支配であることは明らかだ。その元をたどれば、本書も描く朝鮮の独立運動に始まる。今の北朝鮮のような状態になっていた李氏朝鮮を倒すために、金玉均などの改革派は近代化の先輩である日本の支援を求めた。これを受けて日本は朝鮮に介入したが、これが日清戦争の原因となって日本は朝鮮半島を支配せざるをえなくなった。
結果的には植民地支配は失敗であり、朝鮮人に日本に対する恨みを植えつけただけで、経済的な収支はマイナスだった。植民地の収益率が高かったのは19世紀前半までであり、20世紀の帝国主義は時代遅れの戦略だった。「遅れてきた帝国主義国」としてその最後尾について行った日本は、高い授業料を払って植民地支配の愚かさを学んだのだ。
今夜10時からのニコ生アゴラでは、片山さつきさん(参議院議員)と西岡力さん(東京基督教大教授)とともに、日韓関係の最大の障害になっているこの問題を解決する道をさぐる。