代替可能ではないのではないか。
もちろん、両者は違う。
基本的なマクロの教科書でも、オープンエコノミーかクローズドかで異なることは必ず書いてある。
なぜこんなことを問題にしているかというと、
1.恐慌のような危機と不況とでは、財政政策や金融政策の考え方が根本的に異なるのではないか
2.現在、金融政策がもう限界だから(ゼロ金利なので)、財政政策に出動を求める、という議論があるが、これはメリット・デメリット、賛成・反対、経済環境、市場環境による、ということではなく、根本的に誤った考え方なのではないか
という問題意識による。
実は、これは盲点になっているが、普通の話なのだ。
金融政策凧紐理論、というものがあるが、これは、金融政策は凧の紐のように、上がりすぎるのを抑えるために引っ張るときは機能するが、上がらないときに押しても効果は無い、というものだ。
つまり、景気の過熱を抑え、インフレを抑制することには効果を発揮できる可能性があるが、景気を浮揚し、インフレを起こすことは出来ない、ということである。
リフレの議論の中で、インフレを起こすことは出来ない、ということでこの議論は一般的にも少し有名になったが、景気も浮揚できない、となるとちょっとまっとうな有識者の間でも意見が分かれる、あるいは、景気浮揚できない、というのは少数派となるかもしれない。
普通に議論すれば、金融政策、つまり、金利の低下をもたらすことによって景気が浮揚するには、投資または消費が増えないといけない。
金利が低下すれば、採算の合う投資が増え、投資が増えれば需要が増え、景気は良くなる(あるいはGDPは増加する)というのが普通の理論上の考え方。
しかし、現実には、不況期には、投資はコスト(金利)ではなく、そもそも需要があるかどうか、収入が上がるかどうか、モノが売れるかどうかによって決まるから、投資コストが低下しても、需要が伸びなければ関係ないと言うことがあり得る。学問的には、実証研究で、不況期の投資の金利感応度を調べることになる。
消費も同じことで、借金して消費する人はあまりいないから(現代では、クレジットカードのリボ払い金利の低下が消費を刺激する、ということはありうるか)、個人でも、金利低下は、住宅ローンやオートローンにより、住宅投資や耐久消費財の代表、自動車の購入が増えることが一番期待されるが、金利感応度はどうか、というと住宅は明らかに大きく、自動車はそうでもない、というのが一般的な実証結果であり、意見だろう。
つまり、住宅以外はあまり金利低下の効果はないというのが普通の意見。
実際、FRBの金融政策は、ほとんど住宅をめがけている。だから、景気がやや持ち直したのは、やみくもな金利低下政策や量的緩和ではなく、オバマ政権の政策変更で、住宅ローンを組みやすくしたこと(リーマンショック後組みにくかった人も組みやすくなった。金融機関もローンを出しやすくなった)が大きく寄与していると考えられている。
また、量的緩和政策は、長期金利(通常の中央銀行の金融政策は、短期金利の低下をもたらす)の低下を狙ったものだというのが、教科書的な、お行儀の良い説明だが、実際のところは、量的緩和により、直接買い込んだ資産が値上がりして、その資産効果で、消費や投資が増える、ということである。少なくとも、金融関係者で量的緩和をするべきだという人々は、この下心で動いており、中央銀行側も分かってやっているはずだ。
まとめると、もちろん、部分的には、金融政策でも景気浮揚効果はある。住宅と、資産効果による消費の増大であるあるが、その効果の程度については議論があるところである。
しかし、より重要なのは、普通の不況ではなく、恐慌の時はどうか、という問題がある。
恐慌の場合は、いかなる金融政策も、実体経済に対しては効果がないのではないか。