ICTサービス後進国からの脱却は出来るのか?

真野 浩

  世界でも有数のブロードバンド普及率と一人一台以上の携帯電話普及率をほこり、都会の電車の中では常時半数以上の人がスマートフォンなどを操作しているのが当たり前の日本。 昔と比べたら、確かにICTで私たちの生活は、便利で豊なものになりつつあります。 しかし、そのやり方は、どうも今ひとつ消費者不在の痛いものが多いようです。

  例えば、旅行や出張の時に、折角ネットでホテルを予約しても、宿では一から宿帳に情報を再記入し、ネット予約の特急券は、クレジットカード決裁まで済んでいても、特定の場所でしか受け取れなかったり。 ネット系のいなたいサービスに、なんかちょっとムッとしたことは、皆さんありませんか?


 私は、先日の日曜日に、東京都内から御殿場に電車で行くことになり、朝の予定時間に間に合わせるには、小田急線のあさぎり号という特急に乗る必要がありました。 この日は、富士総合火力演習という陸上自衛隊の演習見学が目的で、数万人の人が参加するので、あさぎり号の指定券も早めに予約しないとなりません。 私は、小田急線沿線でもないこと、参加が一週間前に決まった事もあり、旅行代理店などに行く時間がないので、ネット予約をしました。

 ところが、このネット予約では、小田急線区間の新宿~松田までしか予約ができず、松田ー御殿場間は、代理店などにいって、別に購入するか、事前に発券したものを窓口で変更してもらう必要がありました。(もし、松田ー御殿場間が空いていたなかったらアウト) これって、ネット予約の意味がないじゃない…..ということで、いなたさ+1

 次に、当日の新宿駅からの乗車券は、♪スイカならスイスイ♪っとモバイルスイカで改札を通過して、いざロマンスカーに乗車。 ところが、到着した御殿場駅では、スイカで出札ができず、窓口で現金精算ということで、いなたさ+2

 無事に演習を見学して、御殿場に戻って来たのですが、松田ー新宿しかネット予約できなかった僕は、帰りはあさぎりに乗れずに、御殿場ー沼津ー三島ー東京というルートで帰京することにしました。 ここで、なんとも不思議というか素晴らしいというか、御殿場駅では、御殿場線の沼津方面に行くのであれば、スイカで入札できてしまうのです。 しかし、その喜びもつかの間、この場合にはJR東海管内でいちど出札しないと駄目。 三島から新幹線だったので、一旦三島で出札して、新幹線の切符を購入して入札。
 
 でも、この新幹線も、僕が普段使っているJR東日本のえきネットでは、予約はできても、三島では発券ができません、なので御殿場をでる前に余裕でチケット予約して、スイスイとはいかずに、いなたさ+3。 JR東海のEXサービスを使うには、あらたなクレジットカードがいるそうだし…..

 ヨーロッパでは、あの複雑で国をまたぐ鉄道網でも、ネット購入ができて、プリントアウトした券をもっていれば、ちゃんと乗車できるのに、日本ではネット予約して、クレジット決済しても、発券は発行会社の圏内の窓口だけというのが、まったく不便この上ないと思うのは、私だけでしょうか?
 また、ホテルの予約などでも、欧米ではチェックインもチェックアウトも自動化されているのに、日本では、いつも既にネットで入力して伝えてある情報を、宿帳に書くなんていうのが、本当に無駄に思えるのものです。

 というわけで、こういう痛いサービスの愚痴をこぼしても、なにも解決しないので、私なりに考えた解決策を提案します。

  • 行政指導

 こういう不思議な仕組みこそ、個々の民営化された企業の利害がじゃまして解決できないなら、社会の豊かさ、国民の生活の利便性のために、管轄の行政官庁が、指導力を発揮して、協議会や目標誘導などをしてはどうでしょうか? 民業圧迫にはならんでしょ?

  • 垂直分離とオープン化

 実は、鉄道の指定券などのネット予約は、各鉄道会社でしか扱っていません。 旅行代理店で扱っているのは、パッケージ旅行などだけで、切符そのものの発券、予約は、窓口だけです。 これは、多分に鉄道会社が専用端末+専用線+専用システムで、クローズな世界を構築しているからです。

 たとえば、旅行代理店とかベンチャーが、各鉄道会社の端末を並べて、自社のネット予約決裁と連動させる仕組みを作る事ができるでしょう。 それでも、発券が出来ないという問題があるので、航空券のようなEチケットやモバイルチケットと組み合わせることが必要です。 

 つまり、発券とかも含めて、予約、販売、決裁を鉄道の運営会社から分離してくれれば、もっと便利になるのではという提案です。 行政には、こういう消費者の利便性の視点で、規制緩和、オープン化をしてほしいと思うのです。