NAVERまとめに学ぶキュレーション~視点と物語の時代~―@toriaezutorisan

村井 愛子

佐々木俊尚さんの「キュレーションの時代」という書籍がありますが、本当にキュレーションの時代だなと思います。新規のメディアサービスをプレゼンする時は、例としてNAVERまとめを挙げるようにしています。
個人的にNAVERまとめの登場は、メディアにおけるコペルニクス的大転換だと思うのです。


先日打ち合わせで「NAVERまとめって、何が面白いと思いますか?」と、その場にいた人たちに聞いてみたところ「うーん」と首をかしげていました。「キュレーションの時代」でも触れられていましたが、キュレーションサイトの大きなポイントは視点(パースペクティブ)と物語(コンテクスト)です。
まずは、視点(パースぺクティブ)のお話。以下のまとめは、NAVERまとめで活躍している「ちぇりー3個」さんのまとめです。

「ハローキティが仕事を選ばない理由」

言わずもがな、キティちゃんは、ありとあらゆる芸能人やキャラクターとコラボしまくっています。マス媒体であれば、その時その時に発表されるプレスリリースを静的にまとめて発表します。一方、これをまとめた作者さんは「なんでキティちゃんって色々なキャラクターとコラボしまくってるんだろう」という疑問が生まれ、そこから色々調べるうちに、このまとめが誕生したのだと思います。まず、静的な事実の集積に対して疑問を持つことが“キティちゃんが仕事を選ばない理由”という視点を生み出しているわけです。

マス媒体が、静的に物事の事実を流通させているのに対して、このまとめには、作成者個人のモノの見方=視点が反映されていることが分かります。

そして、2つめは物語(コンテクスト)のお話。先ほどのキティちゃんの例を詳しく見ていると、まとめの構成は

【起】相次いでコラボを発表するキティちゃんについて
【承】その背景にある狙いとは何か?
【転】コラボ以外でも常に流行を取り入れてきた
【結】ヒットの要因は、キャラクター運営の柔軟さによるもの

と、起承転結の構成になっているのです。これは、ひとつひとつの静的な事実を整理して、自分の視点(パースペクティブ)に基づいて物語(コンテクスト)を持った構成に組み直しているのです。これがキュレーションということになります。

それでは、視点と物語が加わった情報の何が良いのでしょうか?それは、人々の共感・感心を集めやすいということです。多くの情報が流通している中で、人々の共感や感心を集めるのは、ただならぬことです。人々から注目してもらうためには、視点(パースペクティブ)と物語(コンテクスト)が不可欠になるのです。
また、人々の共感や感心の度合いが強ければ「誰かにこの情報を伝えたい」という欲求を喚起することが出来ます。「NAVERまとめ」がスケールした要因の一つに、ソーシャルツールによる拡散も挙げられると思います。(YahooにもFacebookやTwitterの拡散ボタンがついていますが、これが押されている数はNAVERまとめの方が高いように思えます。情報への共感度が高くなければ、人は他の誰かに伝えようとは思わないのです。)

ちなみにNAVERまとめ上で拡散されまくった急成長サービス「ボケて」という画像投稿型の大喜利サービスがあります。サービス開始から4年“月間PVは50万程度で安定的に推移していたが、今年5月、約10倍に急増”したそうです。

また、ネットサービスを離れたとしても、視点と物語というのは消費活動における重要な要素だと思います。以下は拙作のまとめですが、アイスクリームチェーンのサーティーワンが定期的に開催しているキャンペーンのまとめです。ダブルのアイスを頼むと、もう1つ乗せてくれる「チャレンジ・ザ・トリプル」というキャンペーンになります。

「【チャレンジ・ザ・トリプル】挑戦する人々の意外な事実」

以前から、「チャレンジ・ザ・トリプルやっているから、サーティーワンに行こうよ。」と誘われることがあり、もしや2人以上で参加している人たちが、ほとんどなのではとTwitterで検索をしたところ、やはり2人以上で参加している人たちが多かったのです。さらに、それをイベント事として楽しんでいて、サーティーワンが掲げた「トリプルにチャレンジする」という物語(コンテクスト)を、訪れた人たちが飲み込んでいる情景が見られます。
もう一つの人気キャンペーン「真夏の雪だるま大作戦」(ビックを頼むと、スモールを上に乗せてくれる)とともに、サーティーワンは物語(コンテクスト)を含んだキャンペーンの作り方が非常に上手いなと思います。

最後に、こういう話をすると「キュレーションもメディアのオプションの一つだよね」と、選択肢の中の一つであるように言われるのですが、個人的にはこれは情報流通のコペルニクス的転換の過程であり、オプションの一つではなくて構造自体の変化の過渡期なのではという気がしています。

まとめ
・静的な情報群を、独自の視点(パースペクティブ)で切り取って、情報を物語(コンテクスト)にそって整理しなおしたものがキュレーション
・メディアや消費活動においては、視点と物語によって共感を高めることが必須になると思う

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