アップルはピークアウトか? --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

世界中の人にiPhoneの名を轟かせ、アメリカの株式市場ではその時価総額で歴史を刻み、サムスンとの法廷での戦いはアメリカではアップルの完勝とまで言われ、足を向けて寝られない人は多いと思います。

ですが、このアップル社は私には成長限界が来たように思えます。19日金曜日の株価は609.84ドルと3.6%下げて引けました。これは9月の史上最高値の705ドルから既に13.6%ほど下げていますがこの下げを一時的なものと考えるにはやや不安がある気がいたします。


株価は何故上がるかといえば実績以上に成長期待による部分が大きいのです。そのアップル、近いうちに新型の小型iPadが発売されますが、フィナンシャルタイムズでは今までアップルの新製品が打ち出してきた時代を変える何かがなく、「何も破壊しない」と酷評しています。特にタブレット型コンピューターについてはグーグル、アマゾン、マイクロソフトなど各社入り乱れての大乱戦状態になりつつあります。価格帯もアップルの価格をベースにそれより安い設定をスタンダードとするケースが多く、日本では当面発売されないマイクロソフトの「サーフェス」はアップル比べ約100ドル安いとされ、アマゾン、グーグルはそれよりもはるかに安い価格設定になっています。

つまり、価格だけ見ればアップルの一人負けということになります。

使い勝手を含めてフィナンシャルタイムズはiPadに否定的なようですが私も実はマイクロソフトの「サーフェス」が欲しいと思っています。それは日本でも今ひとつブームに乗り切れないタブレットに関して「サーフェス」はよりノートパソコンに近いものとされ、ノートパソコンで作業をするというスタンスである私としてはMSの方が魅力的に映るのです。

アップルが犯したもう一つのミスは地図サービスでしょう。スティーブジョブズが健在であれば絶対に起きえなかったミスだと思っています。では何故ミスが起きたのかといえば一つはジョブズに依存する体制からまだ脱却できていなかったこと、もう一つはサムスンとの訴訟にエネルギーを費やしすぎたことではないかと思っています。

マイクロソフトにビルゲイツがいて、アップルにジョブズがいたとすればいまや新たなる時代に入り、殿堂入りできる可能性があるのはアマゾンのジェフベゾスぐらいでしょうか? グーグルのシュミットにしろフェイスブックのザッカーバーグにしろ、「大関」ぐらいにはなるかもしれませんが時代を変えるほどのインパクトではありません。アップルのティムクックはまだまだ未知数ですが、MSのバルマーと同じ実務型だと認識しています。

それは創造性には弱みがあるということなのです。ジョブズがティムクックに数年先までのプランを引継いでいたとしたらそれはクックがそれを忠実に実行する人材という意味に取れなくもないのです。逆に言えばそれを無視して違うことが出来るほどの才能を持った人が次に現れるのをその数年以内で探さねばならないというメッセージにも聞こえるのです。

アップルに依存している協力企業は日本を始め、台湾、韓国など多数に及ぶでしょう。しかし、過信をしていると思わぬしっぺ返しがあるかもしれません。例えばシャープはiPhone5等への食い込みに必死でその成果次第で企業再生の将来を占うとも見えますが、アップル人気が剥落したらどうするのでしょうか?

私はその辺がこれからの大きなリスクファクターになると思っています。企業に永遠はありません。マイクロソフトだってピークをつけたあとは苦しい時代に入っています。企業の栄枯盛衰は必ずあるということです。ましてや急成長した会社であればあるほど谷も深いということではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年10月20日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。