ZOZOTOWNの油断、そのポテンシャル --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

前澤友作、36歳。ゾゾタウンというネットによる衣料販売で日本一にのし上がった会社、スタートトゥデイの社長とい言えばお分かりになる人も多いかもしれません。ゾゾタウンのネットに入って冷やかしでもいいので商品を買うプロセスを踏んでいただければ、成程よくできていると思うはずです。


私は何年も前にネットで日本の衣料をカナダで販売できないか検討したことがあります。なぜならカナダはアジア系の人が多いのですが、アジア人の体型と顔かたちに似合う服は案外少ないのであります。いわゆる「かわいい」というコンセプトは欧米系の服には出ない味で大体が「オンナ」とか「オトコ」を打ち出す系統が多いのです。

そんなこともあり、実はゾゾタウンをこっそり応援しておりまして、株でも一時はずいぶんお世話になりました。しかし、残念ながら私は数ヶ月前に全株売却しました。それは同社が5月から一日6時間勤務体制に減らしたことで私にとって魅力がなくなったところであります。

勤務時間9時から3時で休み時間なし、という体制は会議の時間などを削るという策で成しえたとされています。ですが、私には削るのではなく、やっつけ仕事になったように思えるのです。

事実、3月~9月の上半期で取扱高は通期見通しに対してわずか37%の達成率、営業利益はマイナス14%、連結純利はマイナス17%で株価は下降中であります。日経は通期未達になる公算があると指摘しています。もともとゾゾタウンは割引しないというコンセプトで参入したこともあり、アパレルメーカーからの賛同も取りやすい状況だったと思います。また、斬新な形でネット販売を体系化したという点でも評価できたのですが失速しそうな気配があります。

また、楽天、アマゾンなどライバルの出現で差別化が難しくなっているとの指摘があります。また、前澤氏がネットで商品の送料をめぐる件で顧客に逆切れしたということもネガトーンになるでしょう。

私はこの会社の将来性はまだまだ十分にあると思っています。日本の会社らしい細やかな点までフォローされているアパレル専門のEコマースだと思います。企業理念である「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を」を踏襲するのであれば今後、海外に進出する算段を打ち出さねばなりません。しかし、嬉しそうに「一日6時間勤務で同じ給与を貰えるのです」と公言されてしまっては成長路線から安定路線に移行したかと勘ぐられてもしょうがないと思います。

今、この会社は必死に歯を食いしばって頑張らなくてはいけない時期にあるのです。一日6時間ではなくて12時間頑張らなくては負けてしまうのです。効率化とは個人に権限を与え、最少人数で仕事をすることに意味があります。平均年齢27歳強の従業員458名が個々人の権限で動き回る体制が出来ているかという点は私には疑問が残ります。そのあたりが私にはどうしても理解できないのです。だから持ち株は全部売らさせてもらいました。

前澤氏はこれからまだ一波乱も二波乱も乗り越えていってこそ、本当の経営者として伸びてくるでしょう。今後も応援したいと思っています。

今日はこのぐらいにしましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年10月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。