昨日は一票を投じてきましたが、選挙区が兵庫6区です。兵庫6区といえば、2004年の住民基本台帳によると選挙区では 最も人口が多く、また有権者数でも、東京6区、千葉4区に続いて第三位で、一票の格差が大きな地域です。有権者数の少なさで見たランキング10位の高知2区と比べても、倍以上の有権者を抱えていることになります。つまり一票を投じたというよりは、二分の一票しか投じたに過ぎません。
米国などの地方政府の権限が大きい国では、まだしも、日本は明治以来の発展途上国型の中央集権体制で、中央がなんでも決め、地方の自治体は国の下請けみたいになっているのが現実のなかで、一票がそれほど軽いということは、国民としても半人前扱いだということです。あきらかな差別です。各政党それぞれの思惑で一票の格差是正も行わず、選挙を急いだ罪は大きいと思います。
一票の格差は政治を歪めます。有権者数の少ない地方は、地域での地盤、看板が効きやすく、またカバンも豊かで、実力者が安定して当選するために、当選回数で出世が決まったかつての自民党が、地方への利権誘導に偏った政治を行なってきた大きな原因でした。本州と四国の間になぜ橋が3つもあるのかは、費用対効果では合理的な説明ができませんが、それぞれの選挙区から歴代の3名の首相がでたことで、3つの橋が生まれたと考えれば自然なことです。
日本の経済が停滞してきた大きな原因は、均衡ある国土の発展という国家戦略のミスでした。均衡のある国土の発展と言うよりは、それぞれの地域の個性、またそれぞれの地域の文化、経済、人材の資源を生かした多様性のある国づくりを戦略に転換すべきだったのです。均衡ある国土の発展という社会主義的な政策が生まれたのも、選挙制度の歪が遠因となってきたように思えます。
均衡ある国土の発展という幻想が、都市部から税を取り、それを地方に配分するという政策となり、また効率的な産業を伸ばすというよりは、非効率な産業を保護することを進めてきました。だから経済がグローバル化してきた時代のなかで、国際的な都市間競争が起こってきたにもかからず、都市への投資が滞り、東京以外は経済の地盤沈下が進み続けてきたのです。
その典型が大阪です。大阪だけでも、また大阪を中心とした近畿圏経済大きさは先進国の一国に匹敵しますが、ハブ港もハブ空港も持てず、都市の国際競争力がどんどん低下し、域内のGDPも低下する一方でした。近畿圏が競争力を失うことで、それがさらに東京への一極集中化を進めました。もっとも大きいのは人材の流出だったと思います。貧すれば鈍すの例えのように、経済力を失うと政治も弱体化します。いわば大阪はいち早くその悪循環を体験してきた、それも維新の会の人気にもなったのだと思います。大阪は凋落が激しく、それを目の当たりにして実感している人が多いこと、また行政の腐敗が激しかったことも大阪での維新の会の議席確保の引き金となりました。
さて、圧倒的な多数で自公政権が生まれますが、民主党へのレッドカード選挙であったことは間違いないとしても、注目したいのは、また社民党や未来の党など、消費税増税反対、原発反対、TPP反対などの野党的な立場をとったところにも厳しい結果となったことです。政治が思想対立から、現実的な課題解決能力で競い合う時代になってきた、またそれを国民が望んでいることを示す結果だったと思います。
理想主義的なスローガンしかだせず、反対を叫ぶことに終始する政党には国民は飽き飽きしてるのではないでしょうか。鳩山内閣が、最低でも県外と理想論を掲げ、実際には日米の官僚に敗北し、辺野古案に戻ってしまったことで、理想主義だけではかえって事態を混乱させるだけだということを国民は目の当たりに見てきたのです。理想を掲げるのは結構なことですが、政治でも、企業経営でも理想を実現するために、どのような具体的な解決方法を見出し、また成果を積み重ねていけるかの知恵や能力が問われてきます。国民は賢明な判断をしたのです。その点では、票を失うことを恐れたのか政策をグレーなままにしてしまった自民党は、大きなツケを背負ったと思います。やがてそれが問われてきます。
橋下代表代行が首班指名で維新の会は安倍さんに投票すると発言したことに、コメンテーターのなかには、それでは政党ではない、石原さんを指名すべきだとしている人がいますが、石原さんを指名したところで、数で負けるので、それは儀式にしか過ぎません。儀式よりも実際にどちらのほうがその後の影響力をつくれるかという発想のほうが健全かもしれません。
さて、自公は参院で否決されても、それを衆院で覆せる議席を確保し、安定政権となります。外交、経済ともに、また復興推進にとっても、政権の安定化が急務だったので、まずは最低限のハードルは超えた選挙結果だったと思います。
思いきった政策推進ができる基礎はできました。あとは新しい内閣の実力次第です。いろいろ課題はありますが、忘れてほしくないのは選挙制度の見直しです。二大政党制はやはり無理がありました。経済も社会も多様化しているのですから、ある程度多党化することのほうが自然です。
また、最低限、一票の格差問題を0増5減という目先のごまかしで終わらせるのではなく、衆院や参院の定数を含め、根本的にテコ入れしてもらいたいものです。
それすらできなければ、しばらくは日本はバラ色の状況というよりは厳しい課題を抱えたままで、新政権にも試練はやってきます。どう乗り越えていけるかはそれこそ実力が試されるわけですが、すくなくとも一票の格差是正は、次期安倍内閣の非常に大切なミッションだということを忘れて欲しくないものです。