同じ話を繰り返すのはうんざりだが、NYタイムズがまたsex slaveを蒸し返しているので、史実を確認しておこう。NYTは安倍政権が河野談話を見直そうとしていることをこう批判している。
If Mr. Abe revises the apology, the move will run counter to the wishes of the United States. American officials say they have urged Mr. Abe to shelve calls to revise the Kono Statement to avoid increasing tensions with South Korea.
アメリカ政府は「日本政府は河野談話を見直さないで韓国と仲よくしろ」といっているが、これは逆である。韓国政府が慰安婦の「強制連行」の証拠を一つも出さないまま日本を非難し続けているから問題が解決しないので、韓国が嘘をつくのをやめればこの問題は終わる。
ところがNYTのヒロコ・タブチ記者は、いまだに“Prof Yoshimi’s historial account backed up by J-military, other docs, testimony”などと書いている。彼女がちゃんと読めばわかるが、この本の原著『従軍慰安婦』には強制連行の証拠は一つもあがっていない(それは吉見氏も認めた)。あるのは「人身売買も広義の強制連行だ」という彼の勝手な解釈だけだ。
慰安婦の「証言」はあるが、それは1992年の朝日新聞のでっち上げ記事のあと、福島瑞穂氏などが募集して出て来た信憑性のない話だ。私が1991年に取材したときは、一人も強制連行されたとは証言しなかった。自称被害者の証言だけで有罪にできるなら、タブチ記者が「私は自衛官に20年前に強姦された」と申告したら、何も証拠がなくても日本政府は有罪になるのだろうか。こんなあやふやな根拠で、一流紙がsex slaveなどというどぎつい言葉を使うのは恥ずかしくないか。
この問題は深刻である。朝日新聞のデマを河野談話で認めた(ように見えた)ために、NYTなどの海外メディアがsex slaveを誇大に報道し、韓国ロビーが国連やアメリカ政府などに働きかける一方、外務省が何もしなかったため、今や「日本軍は女性を性奴隷にした」という国際的常識ができてしまった。
ところが安倍首相は、慰安婦問題の見直しには慎重だ。韓国を刺激して領土問題などに飛び火することを恐れているのだろう。安倍内閣が2007年に出した閣議決定でも、強制連行は否定したが「河野談話を踏襲する」と書いたため、意味がなかった。その後の訪米で、彼はまた「謝罪」してしまった。
安倍氏の特徴は、日銀のように抵抗できない相手は徹底的にたたくが、農協の既得権にからむTPPや、中韓ともめそうな領土問題については態度を明確にしないことだ。こういう「内弁慶」の態度が見透かされていると、外交でも譲歩を繰り返すことになろう。わかりもしない金融政策で大騒ぎするより、慰安婦問題に決着をつけてほしい。