大学スポーツの外国人学生活躍批判を考える --- 林 良知

アゴラ

正月スポーツの代名詞と言えば箱根駅伝である。

そして今年も一部ネットで話題となっていたが、毎年繰り広げられるのが外国人留学生への批判である。

ある種、これはイベント化している。

関東の地方大会ながら、毎年度高視聴率をたたき出す箱根駅伝だからこそ話題になると言える。各局が視聴率で苦戦する中、今年の平均視聴率28,5%(ビデオリサーチ調査)は歴代3位である。


箱根駅伝に比べると随分地味ではあるが、最近、大学ラグビーでも同じような議論が繰り広げられているので(毎年視聴率は1%台)、炎上を避けるため興味を示す人が少ないであろうこちらの事例で、大学スポーツにおける外国人留学生活躍への批判は妥当か考えてみたい。

2013年1月13日に行われる大学選手権決勝は、外国人留学生2名を有する帝京大学と、国立大学で初の決勝進出を決めた筑波大学という一見すると対照的な大学の対戦となった。

ここで想定される批判としては

「筑波大学は一般入試組が中心のメンバーで決勝まで進んでいるのに対して、帝京大学は留学生を来日させてまでラグビー部の強化、そして学校の宣伝をするなんてけしからん!」

というものが想定される。

筑波大学は国立ではあるが、全国大会経験者などの推薦枠は毎年5枠あり、実際に中心選手となっているのは推薦組が多いので、その点で事実誤認があるのだが、帝京大学が手段を選ばず留学生を集めているという点についても事実に反すると言える。

帝京大学は留学生特別入試においてこれまでの学歴を、そして監督自らが面接を行い、日本文化に興味を持っているか、日本人学生と馴染むことができるか等の人柄を含めて厳密に選考しているということである。日本の大学に留学して勉強することに意欲を持っていると共に、適正があるかどうかという大学が留学生を受入れる本来的意味を重要視しているといえる。

また監督のインタビューによると、入学した留学生が真摯にラグビーに取り組む姿勢に影響を受け、日本人学生は、ラグビー技術のみならず、人間としてのレベルも向上しているという。

大学のミッションである教育は正課教育と正課外教育の2つに分類され、体育会ラグビー部の活動は正課外教育に位置づけられる。

2000年に文部省高等教育局から出された「大学における学生生活の充実方策について」(通称「廣中レポート」)では、大学に正課外教育を重視するように提言しており、外国人留学生の存在が正課外教育に良い影響を与えているのであればそれは廣中レポートの提言に沿ったものと言える。

高校駅伝において、年齢もわからないようなアフリカの少年を日本に連れてきて走らせているというような根拠があるのかないのかもわからないような噂もあったが、もしこれが真実であれば批判されるべきであるが、帝京大学ラグビー部の留学生については、正当な選考のもとに入学し大学に籍を置いている学生の参加であり、他の学生に対する教育的効果もあるということであれば、単なる宣伝行為だと批判されるものではない。

大学スポーツにおける留学生の活躍について論じてきたが、留学生の存在は、大学スポーツの世界だけではなく、大学業界のトレンドと言える。

グローバル社会を睨み、国も留学生の受入を後押ししている。

平成20年7月29日に文部科学省ほか関係省庁が協力して、「留学生30万人計画」骨子が策定され、現在にいたるまでこの計画に基づいた様々な施策が行われ日本にくる留学生は年々増加している。(平成23年は減少しているが、これは原発事故が大きく影響しており平成24年は回復基調である)

■留学生数の推移

JASSO、2012年、「平成23年度外国人留学生在籍状況調査結果」

スポーツ推薦入学を批判してきた人々も、早稲田大学ラグビー部レギュラーメンバーの大半がスポーツ推薦組となった今では、表立っては声をあげなくなってきた。

大東文化大学がトンガ人留学生を有し大学ラグビーにおいて頂点を極めた時代からすると、現在は多くの大学で留学生が活躍している。

個人的には、一般入試組だけという限られたメンバーで、どうすれば強豪校に勝利できるかを研究し、戦略をたて、戦術に落とし込み、血の滲むような練習を行い、勝利を目指すことにロマンを感じるが、各大学のラグビー部で留学生が活躍するのが違和感なくなる日はそう遠くないかもしれない。

林 良知
大学職員