日銀の金融政策決定会合が世界でこれほど注目されたことも少ないでしょう。安倍政権となって初の日銀政策会議であり首相がしきりに金融緩和、インフレ目標導入をプッシュしたこともあり、退任間近の白川総裁との「対決」があるのかという期待と金融緩和をするならどのぐらいするのか、はたまた、2%のインフレはどうやって作り出すのか、興味のポイントはたくさんあったわけです。
個別の内容を見る限り白川総裁の「抵抗の努力」が見て取れる気がします。それは「無期限、無制限」という市場の期待の言葉が出てこなかったからだろうと思います。これは日銀の面子というより白川総裁の意地だったような気がします。また利付の撤廃もありませんでした。
市場はこれを嫌気しました。発表直後はなんとなくよさげに見えたせいか、株価も打ち上げ花火のごとくぱっと上がったもののその後直ぐに200円ほどストンと下げ、為替も90円台の円安水準を一時つけたものの、その後のニューヨーク市場、今日の東京市場で88円台後半となっています。投資家から見れば明らかに失望であります。
勿論、安倍政権にとってはインフレターゲットも出来たし、長期的な金融緩和の方策も出たので良し、とするのでしょうけど確か前回の金融緩和のときも材料出尽くしから政策発表の日は株価が下げていたはずです。
本来であれば、金融緩和やインフレターゲットは喜ぶべきことなのですが、市場というのは情報の先食いをしているので、発表時には「早弁の空箱」のようなもので何も残っていないということなのでしょう。
ただ、この金融緩和は連ドラの「つづく」のようなところもあり、新総裁が選出された際に玉の出しつくし感とならないよう配慮したとも取れます。
さて、2%のインフレターゲットですが、金融緩和だけでは無理だと思うということはこのブログでも再三再四書かせていただいています。あまりにも円安が進むとむしろスタグフレーションという厄介なものが出てくる可能性すらあります。インフレは人口が増加しない前提においては個人レベルの収入が増え、その結果、支出が増えるという流れをとる必要があります。個人レベルの収入が増えるのは爆発的な新産業が出ない前提に立てばいわゆる給与所得以外では株か土地に依存することになると思いますが、株価については既に主力株を中心に上げ一服となっており、目先、調整になるものと見られています。
株価は勝手に上がるものではなく、業績が伴わなくてはなりません。ところが12月から1月の上げ相場はほとんどが期待だけで実績はほとんど何も伴っていないため、これからしばらくは調整を余儀なくさせられるということです。つまり、目先、株価上昇による個人レベルの収入増はそれほど高い期待は出来ないと見ています。
一方、土地、不動産については下がり続けた不動産がようやく一息つくところであり、不動産利益を期待するのは数年はかかるはずです。よって、目先の収入増は給与、株、不動産とも疑問符がついてしまいます。
消費は給与が上がらなければ上向きませんし、平均寿命が延び、リタイア後の余生が長くなった分、資産を一番持っている高齢者も消費に慎重にならざるを得ませんから結局のところ、2%のインフレは茨の道ということでしょうか?
私からするとようやくイベント終了ということでこれからいよいよ本格的な安倍政権のお手並み拝見というところでしょうか?
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年1月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。