デルが見せる時代変化のすさまじさ

大西 宏

デルの創業者のマイケル・デルCEOや投資ファンド、マイクロソフトも加わったLBOで、会社を買取り、株式を非公開化すると発表しています。買収総額は約240億ドル(約2兆2500億円)になるとか。
デル、244億ドルで株式非公開化へ–M・デル氏らによる買収を正式発表 – CNET Japan :
1984年に設立され、通販によるダイレクト販売の新しいビジネス・モデルで急成長して、2001年から2006年にかけてPCの世界の王者として君臨してきたデルも、時代変化の激流を乗りきるためには、ウォールストリートの株主には説得できないほどの大手術が必要になってきたということでしょう。


デルのビジネス・モデルは、PCは時間が経過すると価格が急落する生鮮食品と同じだという発想で、顧客の要望に応じカスタマイズされたPCを、注文を受けてから組立て、顧客に直接売る、だから在庫を持たない、またサプライヤーに売上情報をオープンにし、サプライヤーに部品の生産、供給の責任をもってもらう、結果として「仕入れに支払って、売って代金を回収する」から「売って代金を受け取り、その後で仕入れに支払う」という逆転を実現した仕組みです。

しかし、製品よりも真似が難しいとされるそのビジネス・モデルも、いまやあたりまえとなり、優位性を失ってしまっただけでなく、PC市場の成熟や価格競争の荒波に襲われ、2006年にはHPに王座を譲ることになります。さらにその後にIBMのPC部門を吸収したレノボにも追い抜かれてしまいます。さらにタブレットの登場と急成長で、PC市場そのものの成長に急ブレーキがかかってしまったのです。

しかしこのことはデルだけが抱えている問題ではありません。首位HPとのPCの売上推移を比較したWIRED.jpによるグラフを見ても両社は並行した経緯をたどっていることがわかります。
「ポストPC」の影響が明確に:2社の売上げグラフから ≪ WIRED.jp :

しかも、PC業界が救世主として期待したwindows8もこの状況を変える成果を上げることができませんでした。

おそらく、デルは昨今の買収を含めた足跡でみると、PC市場から、サーバーやセキュリティなどのビジネス向けの市場にさらに大きくハンドルを切ろうとしているのでしょう。
しかし、いまだにデルの売上の半分を占めるPC事業から徐々にであれ撤退するというのであれば、同社の売上の減少は避けられないことになります。コモディティ化し利益の出なくなってしまった事業、しかも今後も成長が望めない事業から逃げるが勝ちと考えるのは自然であり、IBMがPC部門をレノボに売却したことを考えると驚くことでもありません。

デルが株式市場から撤退することは、マイケル・デルCEOが思い切った経営改革や戦略づくりができるようなることを意味します。マイケル・デルCEOは未だ47歳という若さです。どう変わっていくのかが楽しみになって来ました。