4Kテレビ受信機は、4Kコンテンツが無くても、2Kコンテンツの表示機として、値段が安くなれば売れると書いたら、山田肇東洋大学教授からは「画質が良いから売れるって単純すぎませんか?」と言われた。アゴラの読者の鈴木隆氏からはコンテンツデリバリーシステムについて技術屋として何か言え」と言われた。一番センシティブなトピックスであるが、今の段階での私見を簡単にまとめてみた。
メディアの変遷
失敗した、LDとかVHDとかMDとかアナログHDとかは含まない。しかし、私はこれらを失敗とは思っていない。そうすると売れないという偉大な実験であったと考えるようにしている。メディアの歴史は、ビニール盤レコード、銀塩フィルム、アナログ放送、アナログ磁気記録、デジタル光ディスク、デジタルHD放送、デジタルHD磁気記録、デジタルHD光ディスクと代替わりを続けてきて、今はインターネットオンデマンド、インターネットIPTVに移り変わりつつある。
メディア変遷の波はすべて放送から始まった。ラジオもテレビも。NHKは有料であるが、お金を払わないで見ている人は多い。録画すればNHKのお願いは消えるらしい。民間放送はタダである。放送の次は、それを記録する磁気記録が進んだ。その磁気テープカセットがメディアとして定着し、再生機が増えて、そのフォーマットで有料メディアが売られ、レンタルも増えた。パソコンのオンデマンドでタダがYOUTUBE、有料は雨後の竹の子のように発生している。そんなときにこの4Kが出てきたのである。
次は何?
4K放送
放送は2K、4K,8Kのサイマルキャストが望ましい。テストベッドはNHKの仕事ではなく、国の仕事ではないかと私は思う。などと書くと、「サイマルキャストは電波の無駄使い。公費による4K、8K試験放送衛星の打ち上げを止めよ、それにネット配信がある。– Y田 某」というオピニオンが出るだろう。
4K放送の録画
放送の録音録画は取りあえず、磁気ディスクの入ったハードディスクレコーダーが主流になるだろう。これは電機メーカーの仕事になる。ハードディスクレコーダーはソフトを変えるだけで、オンデマンド配信のセットトップボックスになる。
4Kディスク
オフラインのメディアデリバリーは光ディスク。これも電機メーカーの仕事である。取りあえずはいかにBDをモディファイして、4K対応にするかが、当面の一番大きな争点である。4Kのスペックのイニシアティブを誰が取るのかが興味深い。ソニーと、サムソンなどハードメーカーの主導権争いは、こっそり始まっているだろう。アップルはオンラインのフォーマットだけやっているだろう。パソコン本体から光ディスクを外すぐらいの会社だから、4KのBDには何も言わないであろう。しかし、この4Kディスクは、マニア向けの高額なものになり、DVDの様にたくさんは普及しないかもしれない。なぜなら、世の中はインターネットを使ったコンテンツデリバリーシステムの流れになっているからである。とにかく、ハードメーカーの争いか談合で4Kのディスクは決まるのは時間の問題である。
ネットの映像配信
オンラインの映像についてはどうなるのであろうか。ここが一番興味深いところである。アップルは音楽配信では、王様であるが、映像ではトップではない。ハリウッドのインサイダーであったジョブズが生きていれば、事情は違っていたかもしれないが、今のアップルにハリウッドに対する発言力があるとは思えない。
ニコ生のようなリアルタイムの映像配信が直ちに4Kに対応するとは考えられない。NHKは8Kまで待つとかいって、NHKオンデマンドも当分は2K間でしかやらないかもしれない。オンデマンド配信はニセHD(1k)、フルHD(2K)、4K、8Kが混在するのであろう。昔のテレビライブラリーはさらに小さなDVDのフォーマットのママになるのであろう。映画素材は4Kや8Kでテレシネして、リマスターが出てくれば、フアンとしては楽しみである。ネット接続は、光と無線が同時に整備され、2Kや4Kのストリームが安定して可能なバックボーンの整備が、キャリアーの間の競争という形で進むので、楽観している。この色々なサイズの映像をアップサンプリングして表示するのが4K,8Kテレビである。アップサンプリングの競争がこれからの注目点である。
そういうドタバタがこれまでもこれからもやって来るが、今年や来年は、安い4K対応のプレイステーション3か4に、おそらく安くなる台湾、韓国製の4Kモニターを繋ぎ、「4Kテレビで2Kコンテンツを視る」ことが、取りあえずのビジネスになるのではないかと私は言いたいのである。こういう単純なビジネスモデルは強い。
日本のメーカーがこの安い4Kテレビを作って儲けることが出来るかどうかは、国際的な競争力も持てるように企業努力すれいいのではないか。それをしないで4Kは儲からないなんて言う会社は、当然4Kには参入しない。
西 和彦
尚美学園大学 教授