就活生へ贈る「平成24年賃金構造基本統計調査にみる賃金事情」

齊藤 豊

平成24年賃金構造基本統計調査が、厚生労働省より発表された。本務校にて本来の専任教員以外の職務として、今年度からキャリア教育センター併任教員を拝命している身なので、就活生向けに紹介してみる。厚生労働省によれば、大学・院卒の平均賃金は、男性398,600 円で前年比0.2%減、女性282,700 円 同0.2%減となっている。企業規模別では、男性は、大企業(常用労働者1,000 人以上) が380,600 円、中企業(同100~999 人) が316,500 円、小企業(同10~99 人)が282,200 円となっている。女性では、大企業が258,100 円、中企業が231,700円、小企業が210,200 円となっている。


産業別では、賃金が最も高いのは、男性では金融業,保険業(465,300 円)、女性では教育,学習支援業(310,500円)となっており、最も低いのは、男性ではサービス業(他に分類されないもの)(262,600 円)、女性では宿泊業,飲食サービス業(188,100 円)となっている。雇用形態別では、男性は、正社員・正職員が343,800 円(前年比1.2%増)、正社員・正職員以外が218,400 円(同1.7%減)となっている。女性では、正社員・正職員が252,200 円(同1.4%増)、正社員・正職員以外が174,800 円(同1.5%増)となっている。(以上、『平成24 年「賃金構造基本統計調査(全国)」の結果』を参照)

これらの概要をまとめると平成24年はデフレの影響によって賃金は下降したが、企業規模が大きく、知的労働で、正社員で働くことが賃金を高くする方法になる。企業規模の大きい企業数は少なく、規模が小さくなるごとに企業数が増える現状を考えれば、大学受験の偏差値ほど露骨ではないが、就職偏差値的な物差しは存在する。大企業に就職したいという希望を持つのは良い事だが、現実を見る事も大切で、自分の大学の卒業生が就職している企業を就活先に選ぶことは内定を引き寄せる近道になる。

正社員になることが就活の最低限の目標となる。自分の夢を追ってフリーター等になるのを否定する訳ではないが、今の日本社会では、新卒時に正社員になれなければ、正社員になるチャンスは極端に低くなり、30歳までに正社員にならない場合、一生正社員になれない可能性が高まる。人の生き方は様々なので一律に押し付ける気はないが、ノマドなどの流行に影響されて正社員にならない道を歩むのは止めて欲しい。特に女子学生の「腰掛けOLからの専業主婦」という安易な考え方は賛成できない。夫婦の3組に1組は離婚している現状や夫のリストラ等を考えたら安直に専業主婦を選ぶべきではない。

知的労働に就くためには、学生時代の勉強が欠かせない。以前の就活では企業は学業成績を評価していなかったが、今は評価するようになってきている。学生は大学での勉強に力を入れ、GPAを良くする努力が必要。嫌いな科目や苦手な科目を克服することが成績を良くする近道。企業規模が大きい企業に勤めたいのなら偏差値の高い大学で就職率の高い学部に入学すべき。しかし、現就活生はもはやGPAも大学も変えられない。各自、他の方法を考えて欲しい。(私の授業をとっている学生には直接、相談に応じる)

女子大教員なので、女子就活生目線で語ると女性大卒者は男性に比べて年齢階級別の給与が低い。正規・非正規社員の別が賃金を引き下げる要因になっているが、正規・非正規社員の賃金差は男性に比べて女性は小さい。男女の賃金差を最も大きくしている要因は役職の違いになる。役職別のグラフにあるように部長級、課長級、係長級、非役職の順に賃金水準が低くなっている。しかも、女性は係長級になって、やっと男性非役職と同等のレベルに達する。しかし、管理職となる課長級になれば、男女差は縮まる。(女性のサンプル数が少ないことで、でこぼこがある)役職の違いによる賃金の違いを勘案すれば、管理職を目指す総合職で就職することが生涯賃金を向上させることは間違いない。1986年施行の男女雇用機会均等法から20年以上が経ち、男性管理職と同じレベルで働く女性に対する格差は縮まってきた。しかし、管理職人数の男女差は今も存在している。今の女子就活生には20年後、男女格差完全撤廃の期待がかけられている。

以下のグラフは、厚生労働省「平成24年賃金構造基本統計調査」を参照し、筆者が作成した。賃金は月額を指し、年収は「きまって支給する現金給与額」を12倍し、「年間賞与その他特別給与額」を加算した。
出典:http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011429 参照日:2013年2月23日