大学進学を希望する高校生に進学理由を尋ねれば、「良い教師、友人に巡り合い、学び、向上する事で将来社会に貢献したい」みたいな模範的な回答が返ってくるはずである。
しかしながら、本音の部分では、中卒・高卒といった低学歴の同級生に比べてより高い年収(経済的メリット)や所属・将来の役職といった社会的地位(社会的尊敬)が意中にあるはずである。
私は、1975年に地元の国立大学に進学し1979年に総合商社(旧日商岩井)に就職したが、当時は成程大卒の御利益は未だ健在で、大学進学はローリスク、ハイリターンであったと記憶している。
特に私の場合は入学金や授業料を免除して貰い、日本育英会の奨学金を受給していたので余計にその思いが強いのかも知れない。
しかしながら、弁護士ドットコムの「金融事業化」する日本の奨学金制度 「返済できない若者」が急増を読むと、今更ながらであるが、「大学進学はハイリスク、ローリターン」である事を思い知らされる。
奨学金事業を請け負う日本学生支援機構の資料によると、奨学金の返済が遅れている要返還者と未返還者を足した人数は、2004年の198万人に対して2011年が334万人と、7年間で130万人以上も増えている。奨学金を返せない人は、ここ数年で急増しているのだ。
奨学金の制度設計に問題があるというより、大学教育への投資に対するリターンがお話にならない位悪化しているのが原因である。
大学を卒業しても真面な職にあるつく事すら出来ない。
非正規雇用を経て、ニート・プータローというのが今や定番コースと友人が教えてくれた。
大学関係者は理屈を捏ねて反論するであろうが、4年間(或いはもっと)の年月と決して安くはない、入学金や授業料を支払って、「非正規雇用」では元が取れない!
事業計画で例えれば「リクープ」不可能な案件で、不良案件という事になる。手出し無用な案件という事である。
奨学金の返済すら出来ない様な惨状であるなら、最早、取敢えず大学に進学してその後の進路を考えるといった悠長なスタンスでは、結果人生を棒に振る事になるのではないか?
高校生の段階で進路を慎重かつ真面目に考えるステージに来ていると思う。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役