TPP交渉参加を考える --- 岡本 裕明

アゴラ

安倍首相とオバマ大統領の会談の様子をテレビで拝見し、TPP参加交渉への道が開けた嬉しさが安倍首相の顔から感じ取れました。無条件ではなく、品目により撤廃条件をつけることもありうるという言質を得た点において安倍首相の勝利という感じでした。ここまで乗りに乗っている首相は近年見たことがありません。こうなればこの勢いにのって日本が今まで殻を破れなかったことについてどんどん進めていただくしかなさそうです。


さて、TPP、国内ではさまざまな意見があります。このブログをお読みになっている方にも賛成、反対いろいろな意見があろうかと思います。そのポイントはいくつかに集約できるかと思います。

農業問題

これは農協などが中心となって反対を唱えており、農林水産省内部でもその勢力は大きいものと思われます。一方で民間のアンケート調査を見る限り、TPPに反対を唱えている農家は兼業農家に比較的多く、専業農家は割と柔軟な姿勢を示しているほか、高級食材は海外に輸出の道が開けるとして積極的な農家も多いのです。農業はTPPが実施されるとなれば急速にその経営姿勢が変化するはずです。また、TPPの実施はまだまだ先になりますから十分な準備期間もあります。よって私は基本的には心配しておりません。以前書いたと思いますが、私の親戚は専業農家で非常に高級な新種のアスパラガスを生産しており、仮に輸出できるとなれば圧倒的強みを示せると思っています。

産業の空洞化

私はこちらの方が心配です。TPPにより水は高いところから低いところに流れ、多国間において平準化されると考えれば製造業などは確実に外に出て行くタイプの産業になります。よって国内の空洞化は今後も継続するはずで国内は知識集約型産業が中心となるはずです。その時一番頭を悩ますのは失業問題になると見ています。つまり、今のスペインやイタリアのように若年失業者が大幅に増える公算は高いとみた方がよいと思います。だからこそ、私は日本人個々が自分に磨きをかけなければいけないと常々、指摘しているのであります。

グローバリゼーション

今やグローバリゼーションが良いか、悪いかと問うのはナンセンスなのかもしれません。ただ、あえて言うなら地球が数極に分断される可能性はあるかもしれません。つまり、欧州とアフリカ連合、南北アメリカ連合、そしてアジアとオセアニア連合であります。一昔前の経済の教科書ではこれを悪としました。私は今の地球儀ベースのグローバル化において必ずしも悪ではなく、むしろ、それの方が良い部分も大きいのではないかと感じています。それは先進国と新興国、途上国がお互いの役割を分担しあうという流れがこのそれぞれの極において可能であるからです。完全なるグローバル化は勝ち負けが明白になりすぎます。ところが数極体制をとることでそのシェアをうまく分割することが可能になるのです。スポーツでリーグ制にするのと同じ考えですね。

TPPの参加交渉はいづれ始まることになるでしょう。それはもはや引き返せない道でありますからどうやったらこれを日本にとって前向きでかつ有利に出来るか、そして、その間に日本の体質をどう改善するか、そういう努力に力を注ぐべきだと思っています。仮に参加交渉の結果、日本が参加辞退ということになればそれは日本が世界の「アルバニア」になると思ったらよいでしょう。安倍首相の判断は日本の運命の道の選択だったということだと思っています。

ここから新生日本のために皆さんと一歩踏み出してみようではありませんか。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年2月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。