「フリーで飯は食えない」
常見氏はリクルート、玩具メーカー、ベンチャーを経験。今は就職サイト、執筆、講演などをしながら、働き方を考え提案する仕事をしている。そして現役の大学講師、同時に一橋大学大学院の大学院生でもある。
これまで仕事を頑張り、もういいかという段階になると、次の仕事がやってきた幸運が続いた。「最初からキャリア構築なんて行っても、その通りになることはない。そしてフリーなんて言うものは自由と不自由の間をいったりきたりする」と話した。結局は、実力と人脈のある人が、どのような立場になっても生き残る。
一方で今は組織にしがみつく人が増えているという。大企業の若年離職率は急速に低下。労働者は自発的に賃下げをする。しかし多くの企業が、早期退職を増やし、中小企業の労働状況は厳しい。「いろんな働き方があっていい。ところが、皆が頑張る事に追い立てられる厳しい状況」と、常見氏は話す。
日本は世界の先進国の中で、労働者の実質賃金が下落していく唯一の国だ。自分の雇用を守るために、働く人が賃下げを受け入れる。小さな組織、いわば「ムラ」を守ろうとするのだ。その結果、失業率は低いものの、「その中に入れない」非正規雇用者、ブラック企業・下請けの勤務者は守られない。「デフレの原因は『小さな世界を守る』という日本人の働き方や意識とつながっている根の深い物のようだ」という。こうした働き方のゆがみが自由な労働市場の形成を妨げていると、2人は合意した。
「ノマドが日本を動かした」
誰もが満足する働き方の定まった形は見えない。池田氏は、『無縁・苦界・楽』(池田氏によるコラム)など、日本の「非定住民」などの研究を進めた歴史学者の網野善彦氏の研究を紹介。日本の歴史では流浪民など農本社会からはじき出された人がかなりの存在感を持っていた。「悪党」を使い政権を取った異形の天皇後醍醐帝や、明治維新の力の一つになった「一種のルンペンプロレタリアート」(池田氏)の浪人や下級士族の例もある。「ノマドが、閉塞感に満ちた社会を壊す力の一つにもなり、動きに注目したい」と話した。
話は日本のベンチャー企業の走りであるリクルート創業者で、先日亡くなった江副浩正氏の再評価などに話は広がった。
今後アゴラは、一連の映像コンテンツをアーカイブ化。読者の皆さまに提供する予定だ。
(アゴラ編集部)