今日入社式を行う企業が多い。そういった背景もあってか、ネットにも新入社員、新社会人に教訓を垂れるが如き記事が氾濫している。
そして、夜のニュースでは何社かの著名企業の社長訓示が紹介される事になる。何時もと変わらぬ、この時期ならではの風物詩である。
成程、新入社員の見た目は二十年前と殆ど変っていない。しかしながら、私がこの半年で直接会った、多分今日入社式を迎えるに至った修士課程二年生や学部四年生の意識や価値観は大きく変わっている。
そして、今後こういった若者を受け入れる事になる企業を慌てさすに違いない。
それでは、一体何が違うというのであろうか?
先ず第一は、自分の両親世代が高く評価する、例えば財閥系の名門企業であっても如何なる敬意も持っていないという事である。
今一つは、「年功序列」や「終身雇用」といったシステムは昔の話と割り切っている事である。
企業に勤める中高年は、自分達は身も心も企業に捧げたと思い込んでいるかも知れない。実に滑稽な自己陶酔である。
一方、新入社員の中高年に対する評価は、積むべきキャリアパスを怠り、コアとなるスキルを身に着ける事も出来ず、早晩リストラされるに違いない哀れなトカゲの尻尾といった所ではないのか?
言い換えれば、新入社員に取って中高年社員は自分が将来こうなってはいけない「反面教師」という事である。従って、こういう人間が職場にいて、飲み会に誘われるというのは時間の無駄であり、「鬱」な話に違いない。
そういう彼らが、何故企業に就職するか質問した経緯がある。勿論、人によって優先順位は異なるが、押しなべて次の様な説明を受けた。
先ず第一は、矢張り、いきなりベンチャー企業に就職したり、起業したりする事への不安である。大学で学ぶ内容と実社会で生きて行くために必要なノウハウには乖離が大きいので、先ずは大企業に職を得てそういった事をマスターし、次に繋げようと考えている様である。
今一つは、余りに平凡で苦笑するがきちんと月給が貰えるメリットである。先ず、奨学金を完済し自分自身を身軽にし、次に備えたいと答えた学生は結構いた。
それ以外では、勉強したい事があり、夜通学するのでその学資が必要。或いは、次のステップは本当にやりたい事に取り組むので収入が安定しない可能性が高い。従って、少しでも貯金をしておきたいという答えであった。
それから、面白い所では出身大学が提携する海外の大学への留学を希望したが成績が足らず不合格になった。リベンジという訳ではないが自力で留学を果たしたいというもの。
最近、ネットで「解雇規制の緩和」や「雇用の流動化」が取り上げられる事が多い。しかしながら、私の見立てでは若者に関しては放っておいても流動化するに決まっている。
企業は有能な若者の残留を望むのであれば、「遣り甲斐の伴う仕事」、「「早い昇進」、従来に比べれば「破格の年俸」をパッケージで提供する必要に迫られる事になるだろう。
一方、この追加コストを捻出するためには高コストのバブル期採用組のリストラに踏み切らざるを得ないのかも知れない。
今時の新入社員の地に足が付いた生き様が、硬直化した日本企業の雇用体制を変革に向かわせるのではないかと密かに期待している。
山口 巌