「アニメ・マンガ人材養成産官学連携コンソーシアム」の統括委員長を務めています。文科省のおしごとです。アニメとマンガは大切で、人材育成は大事だが、民間に任せる、という文科省のナイスな事業。がんばります。先日、ちばてつや先生、モンキーパンチ先生らを招いてシンポジウムを開催しました。
ごあいさつ申し上げました。平凡ですが、貼り付けます。
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本日はどうもありがとうございます。
私は本を良く読む子でした。でもマンガしか読みませんでした。体の何割かはマンガでできています。NHK、日本の100冊という100人が1冊ずつ選ぶ番組で、私だけがマンガを選び、番組をみた大学関係者からいいのか?と責められましたが、「日本はマンガの国である」と応えました。
テレビッ子でした。アニメばかり見ていました。体の何割かはアニメでできています。カラオケは昔のアニソンばかりで、一緒に行く学生がきょとんとしています。
昔はマンガやアニメばかり見ていると、いいかげんにしておけと諭されたものです。政府から見れば規制の対象でした。
ところが今や、マンガやアニメは、国の宝です。私は政府知財本部のコンテンツ調査会長を務めていますが、マンガやアニメをはじめとするポップカルチャーをいかに発展させるかに8つの省庁が知恵を出し合っています。
先日、ドイツのフランクフルト大学を訪れたところ、日本学科が教授2名なのに学生が500人も入ってきて、アニメ好きであふれて困っていました。北京大学の博士課程の人たちに、反日感情うずまく中、授業をしに行ったら、難しい話はいいから日本のマンガとアニメのことを教えろとせがまれました。
ではこれを一体どう発展させればいいのか。知財本部その他の会合でも、ポップカルチャーを将来にわたって発展させるには、人材育成が最重要課題だということは揺るがないポイント。しかし、具体的にどうすればいいのか。
東大法学部を出た政府の官僚が何十人集まって何年かかって考えてもわかりっこありません。これは、マンガやアニメを創っているかたがた、それを教えているかたがた、それをビジネスにしているかたがたに知恵を頂き、その手法を共有して、広げていくしかありません。
世界的にデジタル技術が普及する中で、マンガやアニメという表現も急速にグローバル化します。人材を育て、海外からも人材を引き入れ、日本のこの豊かな表現を世界に発信していきたいと思います。
また、マンガやアニメの土台は、幅広い国民の力。誰もがキャラクターを作れて、誰もが授業中にパラパラマンガを描ける、1億人の表現力にあります。若年層からそうした力を育むことも大事だと思います。私は10年前から子どもがデジタル技術を使ってアニメなどの作品を創るワークショップを、これまで20万人に対して実施してきました。3月にはそうしたワークショップを集めたイベント「ワークショップコレクション」を慶應大学で開催。世界最大の子ども創作イベントです。
実は、子どもも含めて創作する、表現するという活動は日本は世界をリードしているんですが、それを教育カリキュラムにうまく結びつけられていません。
とても大きな力を日本は持っています。それを人材育成の手法にうまく紡ぎ出したい。
お集まりのみなさまのご指導をお願いする次第です。
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司会したパネルでは、アニメ・マンガの展望を専門家のみなさまに伺いました。
結構悲観的なのかと思いきや、意見をまとめると、「デジタル化で分業が進み」「国際化も進む」が「クオリティの高さは維持され」「マンガ家を目指す学生たちは元気があり」「未来は明るい」という反応でした。
でも、「そうした日本の力、持ち物を日本自らがきちんと評価できていない」という指摘もありました。そこですよね、問題は。
「子どものころにラクガキをほめられた子がマンガ家になってるよね。」という声も。
そうだ、文科省への提言は「パラパラマンガを先生はホメよ。」ですな。
ぼくは「図画工作の授業倍増、子ども全員がデジタルでアニメを作れるようにしろ。」と吠えて文科省に叱られていますが、やはり何度でも言おう。と思いました。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2013年4月22日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。