池田信夫さんの「人口の都市集中が必要だ」に対して小幡先生が、「東京一極集中化」をさらに進めると、ソウルに一極集中しはじめた韓国と同じであり、日本の多様性から生まれる日本の潜在力を損なうことになって、ついには「韓国に負ける日がやってくる」と反論されています。
都市への人口集中には反対する
現実は小幡先生が危惧されている東京への一極集中化は紛れもなく進行してきており、「韓国に負ける日」にむかって日本はまっしぐらに向かっているのかもしれません。
東京にいると、そのことがあまり気にならないのかもしれません。しかし、国勢調査や総務省の「情報通信白書」のデータから、日本の総人口に占める東京圏の人口比率の推移を、将来予測も含めて、garbagenewsがグラフ化していたことがあります。
三大都市圏への人口集中推移をグラフ化してみる(2012年版情報通信白書より):Garbagenews.com :
これを見ると、1970年には東京圏と、近畿圏と中京圏の合計がほぼ拮抗しており、三大都市圏合計でも全国人口の46.1%でした。その後、近畿圏と中京圏への集中はほぼ横ばいで推移していますが、地方圏の人口比率が減少し、東京圏への流入がどんどん進んできたことがわかります。
第二次大戦終結直後の1945年には日本の総人口に占める東京圏の人口シェアは13.0%であったものが、その後の集中化が止まらず、直近の国勢調査では27.8%だったので、戦後の歴史でみれば2倍以上の東京への一極化が進んだのです。
原因ははっきりしています。経済成長を牽引してきた情報通信や金融、また研究開発の東京への集中化が起こり、地方との圧倒的な格差が生じたことです。地方を支えてきたのは製造業や農林水産業です。
近畿圏や中京圏はまだ製造業の本社機能も残り、また人口が多いためにサービス業も発展しましたが、その他の地方は、大都市を除けば、本社が東京圏にある製造業の出先としての工場と農林水産業しか残らなかったのです。そして今は工場の海外流出の波に襲われ、地方経済の衰退化に拍車をかけています。
しかし、それも結果でしかなく、ほんとうの原因は、さまざまな産業に対して、中央官僚による統制や規制があって、その結果、東京圏に産業の中枢機能が集積してきたのです。さらに東京圏への人口の集中化が進めば進むほど、市場のパイも大きくなり、さらに産業の東京圏への集中化が起こるという循環が起こってきたのです。
地方は人材や産業の流出の代償として地方交付金に依存して成り立つという構図になってきてしまったのです。
この図式は持続性がありません。地方が失ったのは自立の力であり、人材を蓄積し、産業を起こして独自の競争力を持つ能力です。そして、今後ともさらに、東京圏への依存度は高まっていく一方です。いつまでもつのでしょうか。
さて地方に行くと、小さな都市でも、そこに訪れ、資料館などに立ち寄るとかつては立派に都市機能を持っていたことが体感できます。しかも人材も地元に残り、さまざまな産業の創出をやっていたのです。そういった時代と決定的に異なるのは、今では子供時代は地方で育っても、多くの人材が東京圏へ流出して、新しい産業を生み出す人材が決定的に地方は不足してきていることです。
そのことは近畿圏にいても痛感させられてきました。企画の仕事、マーケティングの仕事、またデザイナーなどクリエイティブな仕事をしている人たちが、どんどん関西を離れ、東京に移っていったのです。自分自身を振り返っても、たまたま大阪を拠点にして活動できたのも、東京の仕事の比率が高かったからです。いわば現代の出稼ぎをやっていたからです。
地方は、今都市機能の空洞化が激しく進行してきています。シャッター通りが増えたのもその結果です。三大都市圏の、人口が多いところでは、いまでも商店街は賑わっています。地方は都市機能が空洞化し、また郊外に拡散してきました。そして人口減が激しく、やがて地方の小都市は過疎化によって消滅していこうとしています。
そのあたりの地方都市の現状や課題につていてこちらが詳しいので参考になります。
地方都市再生論 [単行本]
東京の企業の出先の城下町、県庁や市庁の城下町ではなく、もっと多様な地方都市の都市機能を回復させることが必要になってきますが、それよりも都市に再び人を機能を集中させないと高齢化していく地方の介護や医療サービスの維持すら困難になってきます。
拡散してしまった地方都市のコンパクトシティ化は必然的な流れです。
それに歯止めをかける決定打が地方分権です。中央官僚による支配体制から脱却して、地方の自由と自立を取り戻すことです。しかし現実を考えれば、戦略的に東京一極集中から地方の大都市圏への多極化を進め、なによりもそれでさまざまな産業の成長を促して、成功事例をつくりだすことだと思います。
成功事例を見れば、それが他の地方都市へも波及していくでしょう、地方経済の再生が起これば、地方都市への人口集中は、その結果として起こってくるはずです。地方分権といっても、東京に暮らす人たちにはピンとこない問題かもしれませんが、日本の命運をわける重要な課題です。