自滅にむかう民主党を再建するには

大西 宏

政治もマーケティングです。人々の共感をえる商品としての政策をいかに生み出し、また人々の支持を得るために知恵を絞り、人々に働きかけることはマーケティングそのものです。どのようにという手法は時代によって、また状況によっても変化してきますが、本質は変わりません。


その視点から見れば、安倍総理は実にいいマーケィングを展開して成功したと思います。しかし、政権の座を滑り落ちた民主党は茫然自失という状態のようです。参院選をにらんで「靴底減らし運動」の一環として「全国行脚」を行ったり、アベノミクスを批判するビラを作成したりしたようですが、安倍内閣の支持率が高止まりし、民主党に逆風が吹き荒れているとはいえ、なにか痛々しさを感じます。

「奇手、妙手があるわけではない。愚直に地域を回り、訴え、国民の声を聞くしかない」という海江田代表の言葉にも、リーダーとしての資質を疑わせるものがありますが、そのとおりでしょう。奇手、妙手があるわけではありません。

なぜなら民主党の存在理由から揺らいでいるのですから、小手先の手法で立ち直れるというものではありません。マスコミだではなくネットでも民主党叩きの嵐も吹いています。しかしそんな時こそ、党を根本から変えるチャンスなのです。
「ニコニコ超会議2の民主党ブースがガラガラで、まばらで、閑古鳥で、スルーされて、相手にされなくて、人がいない」という証拠画像がネットに流れていても、実際はそうではなかったことを伝えてくれる人もいるのですから、世の中は捨てたものではありません。
ネットで話題の「民主党ブースに人がこない」画像・動画に関する『真実』を伝えたい:【2ch】ニュー速VIPブログ(`・ω・´) :
民主党の人が読んでくれるかどうかはわかりませんが、おすすめしたいのは、政党そのもの、また掲げる政策を商品だと考えると、マーケティングでいう「中核価値」をどう考え、またどう再創造することです。ところで、政党や政策の「中核価値」とはどのようなものでしょうか。

どう定義するかはその政党の個性だと思いますが、「希望」だと定義してみると今の状況がよくわかります。安倍内閣がなぜ高支持率なのでしょうか。それはアベノミクスというブランドで包まれた「希望」を売っているからです。

コトラーのマーケティング・コンセプト [単行本]

多くの人々が、もしかすると日本の経済が立ち直るかもしれないと感じ、また富裕層では株価が上がったという体験がさらに「希望」をふくらませています。その商品も、もしかすると欠陥品かもしれないのですが、欠陥が発覚し、失望のどん底に落ちるまでは、すくなくとも国民の多くは「希望」を捨てたくはないのです。

では民主党は、どんな「希望」を国民に提供できるのでしょうか。もっといえば、もう全方位で自民党と対峙する勢力を失っています。すべての国民に受けることなど考えるほど愚かなことはありません。特定の人たち、しかも影響力の大きい人たちにターゲットを絞ったほうが、切れ味が鋭くなり、基盤をつくるためには有利になってきます。

国民の声を聞くこともいいのですが、今日のマーケティングでは、いくら消費者の人になにが欲しいかを聞いても答えは返ってきません。仮説が必要で、仮説を示してはじめて、本音が返ってきます。つまり、まずはコンセプトを再創造することが第一です。それなしには、国民のほんとうの声も返ってきません。今なら、国民の声を聞いても、どんな声が返ってくるかは想像がつきます。

民主党が消滅しても時代の流れ、また自己責任でしかたがないのですが、日本維新の会が、東西冷戦時代を背負ったまま齢を重ねた老人たちを背負ってしまったために、切れ味も悪くなり、急速に人気を失ってしまいました。このままでは、政権交代の緊張感をつくりだす健全な野党が日本の政治からなくなってしまいかねない状況になっています。

党内でさまざまな考えがあり、国民に「希望」を感じてもらうだけのエッジの効いた政策を打ち出せないなら、いったんは解散して、野党の再編を狙うのも一手かもしれません。
まずは存在意義、存在価値がいかにすれば生まれ、また高まるかの原点づくりから始めて欲しいものです。敵は自民党ではなく、自らの思想の弱さだと発想を変えれば、また異なった戦略も自ずと生まれてくるはずです。

これだけ変化が激しく、海外の影響も大きく受ける時代ですから、やがてまた政権交代を国民が望む時機はかならず再び到来してくると思います。その時に国民がよりよい選択をできる価値ある野党づくりは政治家の使命ではないでしょうか。