就職活動で30社、40社からNOを突きつけられた若者が自信をなくしている、という話はあちらこちらで聞かれるようになりました。就職試験を受ける方にとっては自分の実力を信じて全てをぶつけているのに数日後に届く「残念ながら今回は…」の返事が度重なれば相当丈夫な精神の持ち主でもボディブローのように効いてくるのではないでしょうか?
そして運よく、憧れの大手上場企業に入社したとしてもそこに待ち構えるのは歯車の歯車の仕事です。日経ビジネスの「私の新人育成」にスターバックスCEOなどを歴任した岩田松雄氏の記事がでておりますが、氏が日産自動車に在籍していた時、ひたすらナットの調達だけを何年もしている同期がいるのに強い違和感を感じたそうです。
ではなぜ、ナットの調達という楽しくない仕事でも何年も続けられるのかといえば難関を突破してようやくたどり着いた大手企業をそう簡単には諦められないこと、そして結婚でもすれば奥様からは「日産自動車」の名詞が近所でのプライドとなる以上、安定もなくなる退職、転職の道は限りなく反対されるというのが答えでしょうか?
人はコンサバになりがちです。一度掴んだ仕事はまず手放しません。日本はそれでもまだよいほうです。ヨーロッパに行けば雇用が守られすぎていることもあり、高齢者が辞めないで前線で働くために若者のポジションが不足しています。
一方、今よりももっと上を目指す人もたくさんいます。同じ日経ビジネスに堀場製作所の父子の記事があります。堀場製作所といえば上場会社ながらベンチャーの代表的企業であります。その記事の中で2001年、子が父の築きあげた40年間に渡る日立製作所との提携関係を打ち切ったというくだりがあります。理由は仕事のペースが合わず、巨大企業の非柔軟さが堀場製作所の身軽でどんどん突き進む社風と合わなかったということのようです。
普通なら日立製作所と提携関係にある、ということが企業にとってどれだけ心強く、ましてや、メインバンクから融資の条件にされるぐらいの重みある企業関係ですが、それを断ち切る勇気は自分への自信からやってくるのでしょうか?
日本は終身雇用こそ徐々に減ってくると思われますが、雇用するほうも雇われるほうも数十年スパンの雇用関係を前提としていることはなんら変わりがありません。しかし、冒頭のナットの調達だけ延々としていたとしても社内で一定の評価はあっても社外では極めてつぶしが利きにくく、結果として企業から辞められない人間を作り上げているとも言えるのです。
私の会社で右腕となる人物は数年に一度変わっていきます。それは若手だからやむをえないのですが、新しい片腕に出会うたびにその人の才能の発見と業務への結果に繋がることに嬉しさを感じています。つまり、どんな人もそれなりの才能を持ち合わせており、それを引き出せるかどうかはむしろ、雇う側や上司にあるのです。しかし、今の日本の大企業の構造ではそれは難しいかもしれません。
世界はグローバル化の中、一秒でも早い情報をビジネスに結びつけることで勝者が決まっていきます。巨大な組織は巨大な組織の強みがありますがスピード感はありません。これは組織がチャンスを掴みにくくしているとも言え、若くして才能ある者がその可能性を引き出せずに埋もれたまま、社会人生活を時間と共に流されていっているともいえないでしょうか?
就職のミスマッチが頻繁に起きています。学生からすれば誰でも知っている人気企業に入ることが友達への自慢となるのかもしれません。しかし、自分の将来は自慢することではなく、自分が満足できるかどうか、ということではないでしょうか?
常に新たなる世界に挑戦するベンチャーや名の知れない小さな会社で夢を皆でシェアしながら汗をかくというのも生き方なのではないかと思います。
日本人は改良が世界一得意な人種です。才能は意外なところで発揮できるかもしれません。そしてその舞台はいまや、地球儀ベースなのです。
今日はこのぐらいにしておきましょうか?
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年5月9日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。