景気改善の貢献者は「アベノミクス」より「キブノミクス」

北村 隆司

安倍政権の出足は、誰が見ても評価に値します。

然し、これがリフレ派の偉い先生方のご指導を受けて編み出された「アベノミクス」のお陰だと結論を出すのは早すぎます。

私の意見では、国民の気分を高めないと何も始まらないと主張して来た、「経済気分論(キブノミクス)」の麻生副総理が実際の貢献者です。

閣僚としてはどうかと思う麻生さんですが、「気分」に目をつけるなど「インテリには出来ない」慧眼は中々のものですが、英訳すると「ムードノミクス」となる位ですから「キブノミクス」は何時変わるとも予想はつきません。

「キブノミクス」は飽くまでも「救急処置」で、治療ではありません。

1999年のグラス・ステイーガル法の廃止以来、金融に引きずられた世界の経済は、ラスベガスより遥かに腐敗した賭場になって仕舞い、地道な生産努力どころか、理論やデータなどより嘘ごまかしをベースにした風評で相場を動かす勢力が力を持つて仕舞いました。

その為もあり、偉い経済学者の提案する政策はことごとく失敗し、世界で勃発する大小の経済危機の火消しに懸命なのが現状です。

この傾向を受けて世界的に流行した「風評経済病」の重症患者として、「ICU」に担ぎこまれた「日本 経済」と言う患者を尻目に、日本の先生方は延々と井戸端協議を続けるだけで、ろくな手当てもしませんでした。

そこに、麻生さんが救急手当てとして「気付け薬」を打っただけでも偉いものです。

その結果、患者は目を覚まし、重湯くらいは口に出来る様になったのが現在の日本経済です。

今、日本経済を元気つけているのは、同一通貨で比較した生産性が上がった訳でもなく、国民の収入増もないのに、安倍内閣発足以来20%以上も下落した「円安」や、今年に入り28%も上昇した「株価」と言う投機的な現象に支えられています。

然し最近、気分の高揚が実体経済にも波及効果を与え出し、3月のデパート売上高は前年同月比で3.9%増加し、7年ぶりに3カ月連続増を記録したり、首都圏のマンション発売戸数も大幅に増え、減少していた就業者数も増加するなど、勇気つけられる数字が出始めました。

この傾向を、どの様に永続させるか? 

換言すると麻生副総理の短距離「キブノミクス」の好調なスタートダッシュを、「アベノミクス」が引き継ぎ永続させる問題は未だ始まっていません。

少し気になるのは、これまで発表された「三本の矢」は良いこと尽くしと言う点で、民主党のマニフェストにそっくりだと言うことです。

違うのは、民主党は「規制を緩和して、節約で補いますから無駄なお金を使いません」と絶叫したのに対し、自民党は「規制には手をつけませんが、思い切りお金をつぎ込んで、国民の懐を豊かにします」と約束している事です。

まさか、自民党の先祖帰り政策が、古い歴史を誇るギリシャに国民を連れて行くつもりではない事を願うばかりです。

経済は水物ですから、始まる前にいちゃもんばかりつけても仕方ありません。

要は、安部政権や自民党が結果責任を取る覚悟と、国民が責任を取らせる態度を鮮明にする事です。

2013年5月10日
北村 隆司